覚悟なければ「1、2年で終わる」 楽天入り西川へ…恩師・高嶋氏の厳しい言葉に滲む愛

智弁和歌山・高嶋仁名誉監督【写真:荒川祐史】
智弁和歌山・高嶋仁名誉監督【写真:荒川祐史】

「遥輝はどうした?」周りを見渡してもいない…恩師の忘れられないエピソード

 印象的なエピソードがある。「僕の機嫌が悪くて、ミーティングが長くなると思ったら(西川は)その輪にいないんですよ。『遥輝はどうした?』というと『(担任の)先生に呼ばれまして……』と周りが言う。そうやって抜けるんですよ。賢い子だから、機転が利きますね。プロに行く選手はそういう子が多いです。(担任の先生から)呼ばれるはずがないでしょう……」。半分呆れたように笑って振り返る。

 2008年の1年夏は「9番・三塁」で2回戦から出場した木更津総合(千葉)戦でそんな天性の賢さを見せた。ひとつの盗塁がそれを物語る。

「盗塁のサインはないので、盗んだら行っていいよと伝えていました。そしたら、1球目から行くんですよ。アウトになったら怒るのですが、彼は西川は『特徴が分かります』と言って(アウトに)ならないんですね。しっかりと、ベンチで見ているんですね。そういうのは教えられませんから」。智弁和歌山での3年間、高嶋氏は西川に野球を「教えたことはない」と言い切る。

 可愛い孫について語るように、教え子を思い、言葉を紡いでいく。一つの質問に対する回答に感じた熱に愛情を感じる。西川も高嶋氏の元を毎オフ、挨拶に訪れており、敬意を表している。

 旅行が趣味の高嶋氏は、2018年4月26日、北海道へ足を運んだ。教え子は最高のおもてなしを用意していた。

「『チケットあるか?』と聞いたら、用意してくれましてね。球場に行ったら、他のお客様と入り口が違って……いい席に案内してくれました。眺めもよくてね」

 西川はこの日「1番・中堅」で出場し、5打数2安打1盗塁の活躍。恩師の目の前で結果という恩返しをした。

「試合後に電話がかかってきて『監督が来ていたので、必死に……打たなかったら後で何を言われるかわからない』と。『毎日来るぞ』と言ってやりました(笑)。必死なんだなと思いましたね」。

3打数1安打で終わるのと4打数1安打で終わる違い

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY