新庄剛志と“サプライズ”の記憶… 現役選手にも受け継いでほしい「やるからには勝つ」

悔しいサプライズ後の敗戦…「これを乗り越えてどんどん成長してもらいたい」

 そして今回、グラウンドで念願の空を飛んだ。就任直後から準備を続けてきたというビッグ・サプライズ。やったからには勝たなければならないと、誰よりもビッグボスが感じていたはずだ。チームの軸にと信じた上沢を先発に立て、近藤を1番打者に置いた。現有戦力で目いっぱい勝ちに行ったが、及ばなかった。0-4で敗れた。

「選手たちが懸命にやっての結果だから。これを乗り越えてどんどん成長してもらいたいと思いますね。まだ始まったばっかしやん。そういう気持ちでみんなにも思ってもらえたらいい」

 球場の観客数が実数発表になったのは2005年。それ以降で初めて、札幌ドームで収容人員通りの数字「4万3473人」が発表されたのは、新庄監督が“宙づり”になった2006年6月6日のロッテ戦だった。直前まで何が起こるかわからないというサプライズが呼んだ観客は、いつしかグラウンドの野球に視線を移した。シーズン終盤に日本ハムは勝ち続け、9月には新庄劇場なしで2度の超満員を記録する。そのまま44年ぶりの日本一まで駆け上がった。

 今回も同じことが起きてほしいと、期待してしまう。指揮官の取材を終え、暗くなった札幌ドームの記者席に戻ると、万波や今川が必死の形相でバットを振っているのが見えた。指揮官の抱えた悔しさは、新庄劇場をおぼろげにしか知らない今の選手にも伝わっている。時間はかかるかもしれない。それも1つ成長するための、大きな“バネ”になる。

○著者プロフィール
羽鳥慶太(はとり・けいた)神奈川で生まれ、愛知、埼玉などで育つ。立大卒業後書籍編集者を経て2001年、道新スポーツに入社し、プロ野球日本ハムを12年間担当。WBCなどの国際大会、アマチュア野球、平昌冬季五輪なども取材する。2021年よりFull-Count編集部所属。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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