佐々木朗希は「江川を超える可能性」 両怪物と“対戦”したMVP捕手が徹底比較

野球評論家の中尾孝義氏【写真:中戸川知世】
野球評論家の中尾孝義氏【写真:中戸川知世】

「高校時代の朗希の体力とボールではプロで通用しなかった」

 中尾氏と江川氏の縁は深い。兵庫・滝川高時代、選抜大会出場直前の栃木・作新学院高と合同練習を行い、シート打撃で江川氏と対戦。チームメートのバットが次々と空を切る中、中尾氏だけは剛速球を2球ファウルし、最終的には大きく割れるカーブを投げさせ見送り三振に倒れた。プロ入り後は中日時代に何度も対戦し、1984年のオールスターではバッテリーを組んで、伝説的な8者連続三振を後押ししている。

 佐々木朗は、高校時代と比べてどこが変わったのか。中尾氏は体の使い方に着目する。下半身が安定し、軸がぶれなくなった。以前は腕を強く振らなければならないという意識がうかがえたというが、現在は肩の回転が先に来て、そこから遅れて腕を振ることができていると分析する。「だから球持ちが良く、最後のリリースで指の掛かりが良い。球の回転数も上がっています」。初速と終速の差が小さく、変化球はより打者の手元近くで変化する。打者は速球に対してボールの下を振ってしまい、球速差からフォーク、カーブ、スライダーにはタイミングが合わず泳がされてしまうのだ。

 中尾氏はロッテが進めてきた“英才教育”を評価する。1年目は公式戦に登板させず体力強化に専念、2年目も1軍では長いインターバルを取りながら11登板(3勝2敗)にとどめた。「しっかり鍛えました。全て今年以降のためでしょう。朗希の高校時代の体力とボールだったら、プロでは通用しなかったと僕は思います」と指摘する。

 20歳の令和の怪物は、既に昭和の怪物を超えているのだろうか。中尾氏は「私は同級生として、いまだに江川以上のストレートを放った投手はいないと信じています」と話すが、一方で「朗希にはまだまだ伸びしろがある。底が知れません。江川を超える可能性は十分にあります」と付け加えた。“時空”を超えた投げ合いを想像するだけで、ワクワクさせてくれる2人である。

(Full-Count編集部)

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