「勝利にこだわりすぎていた」 巨人・坂本育てた名将が“無欲”でつかんだ甲子園
明秀日立・金沢成奉監督 指導方針を見直すきっかけは新型コロナ感染拡大だった
今春、4年ぶりに選抜高校野球大会に出場した茨城・明秀日立の金沢成奉監督は、2年前から指導方針を一新していた。光星学院(現・八戸学院光星)を指揮し、巨人・坂本勇人内野手らを育てた頃とは異なる感覚で聖地に立っていたという。指導を見直したきっかけは、新型コロナウイルスの感染拡大。全員野球への転換が、チーム力の向上につながった。
夏の甲子園切符をかけた茨城大会を直前に控えたある日。明秀日立の練習グラウンドでは、3年生部員35人全員がノックを受け、打撃練習を行っていた。この時期はメンバーを絞り込み、メンバーを外れた3年生はサポートに回るのが一般的。異例の光景を金沢監督が笑顔で説明する。
「3年生全員がまだ、レギュラーを取れると思ってやっています。諦めていないんです」
掲げているのは「全員野球」。たとえ時間がかかっても、全ての選手が同じメニューをこなす。この考え方は2020年から取り入れたもので、かつての金沢監督はベンチ入りメンバーとサポートメンバーをはっきり分けていた。
「社会では我慢して誰かを支えることもあると考えて、補欠の選手にはサポートに徹してもらっていた時もありました。今考えれば、勝利にこだわりすぎていたんです」