東芝エースをドラ1候補へ導いた“大谷翔平流”のヒント 入団同期のコーチが見た進化
実戦派左腕の藤村哲之…球速を伸ばしてプロの評価も上げた
一方の藤村は、完成度の高さが光る。都市対抗1回戦では7回からリリーフし、3イニングで6つの三振を奪った。ネット裏のプロ野球スカウトたちは「1位指名もある」とまで評価する吉村が降板しても、グラウンドに目を光らせていた。実戦派の左腕として、藤村も注目されている証拠だ。
新垣コーチいわく「最初から『ベテランが入ってきた』って言ってたくらいですよ」。チェンジアップの使いどころを心得ていた。社会人の世界であれば、それだけで十分打者を牛耳れるボールだ。2年目の今年は上の世界まで見据え、より強いストレートを投げることをテーマに置いた。
投げる時に体が上下にぶれ、パワーロスしていたフォームの修正に踏み切った。捕手の練習に参加し、フットワークを磨いた。投げる時、後ろにパイプ椅子を置いての練習もあった。体が下がると、椅子に当たってしまいまともに投げられない。年間通しての取り組みで、直球は145キロを超えるようになった。「打者に聞くと、150キロくらいに感じると言われます」と新垣コーチ。似たタイプの投手として、石川雅規投手(ヤクルト)を挙げる。
指導していて、気づいたことがある。「2人に言えるのは、継続する力がすごいということです。これは(大谷)翔平もそうでした」。日本ハムで過ごした6年間、大谷には「カキさん」と呼ばれしたわれた。携帯ゲームに熱くなる大谷の姿を覚えている一方、気が付けば夜でもウエートトレーニング場にいて、黙々とトレーニングをこなしていた光景も思い出す。これと決めたことに、愚直に取り組む姿は吉村も藤村もすでにプロ級だ。
「目標が、目的がはっきりしているからそこまでできるんでしょう。僕もプロに行きたいという時期はそうでしたよ。でも翔平には勝てませんでしたね……」