140キロ超え14人、メンバー外が満塁弾…甲子園V導いた仙台育英の“平等評価方式”

甲子園優勝、熱い涙の抱擁があった背景

 涙の抱擁は、どんな気持ちだったのか。

「中学の指導者をやっているときから、『宮城や東北の野球を変えたい』と、強い気持ちで猿橋先生と切磋琢磨してやってきたので、その想いが溢れ出ました」

 猿橋先生は、「須江監督は『日本一』というエンディングに向けたストーリーを描く小説家で、ぼくは内容の行き違いや齟齬があったときに微調整する編集者」と、自身の役割を語る。

 この日本一は、小説の最終章なのか、あるいはまだ物語の途中なのか――。

 センバツにつながる、秋の宮城大会はもう間も無く開幕する。甲子園で好投した高橋煌稀、仁田陽翔ら2年生が多く残るだけに、「センバツも期待できる」といった声も聞こえてくるが、そんなに甘くはないことを指揮官が一番わかっている。

『日本一からの招待』に向けた戦いに終わりはない。頂点を獲ったからこそ、また新たな物語が始まる。

(大利実 / Minoru Ohtoshi)

○著者プロフィール
大利実(おおとし・みのる)1977年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、スポーツライターの事務所を経て、フリーライターに。中学・高校野球を中心にしたアマチュア野球の取材が主。著書に『高校野球継投論』(竹書房)、企画・構成に『コントロールの極意』(吉見一起著/竹書房)、『導く力-自走する集団作り-』(高松商・長尾健司著/竹書房)など。近著に『高校野球激戦区 神奈川から頂点狙う監督たち』(カンゼン)がある。

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