名門・横浜高が実施した北海道・紋別合宿 2年生中心で行った意義、主将が語る収穫

紋別高・加賀谷実監督と横浜高の選手たち【写真提供:紋別高野球部】
紋別高・加賀谷実監督と横浜高の選手たち【写真提供:紋別高野球部】

紋別高との練習試合に大勝も「自分たちに足りていないものに気付いた」

「紋別合宿」の仕掛け人となったのは、2021年春から紋別高校の指揮を執る加賀谷実監督である。日体大卒業後、神奈川県立高校の教員となり、川崎北、相模原総合、弥栄、厚木北と、赴任したすべての学校をベスト8以上に導いた実績を持つ。「横浜や東海大相模に勝つ!」と、本気で甲子園を目指していた指導者だ。

 2021年3月に60歳の定年退職を迎えるタイミングで、縁あって紋別市から声がかかり、紋別市スポーツ課の職員として採用された。「やるからには、甲子園を目指す。ただ、紋別高校の選手たちは甲子園のレベルがなかなかわからない。横浜高校の野球を間近で見ることで、日本一のレベルを感じてほしかったんです」。

 村田監督は、横浜に就任する前は白山高校の監督を務め、加賀谷監督と同じように「打倒・私学」に燃えていた。日体大の先輩後輩の関係でもあり「紋別に来てくれないか」とお願いすると、快く引き受けてくれたという。

 当初は招待試合のみの予定だったが、「涼しいところで合宿をやりたい」という横浜側の願いもあり、4泊5日の日程となった。紋別の部員は13人。8月27日の練習試合では2-10で敗れたが、午後から合同練習を行うなど、刺激的な時間を送ることができた。「横浜の野球を感じたことによって、うちの選手たちの意識が確実に変わりました。円陣で集まるときのスピードや緊張感、1球に対する意識、スイングやキャッチボールの一発目の意識など、大きな刺激をもらうことができました」。

 学びを得たのは、紋別だけではない。横浜側も、紋別との戦いの中で感じたことがあった。緒方が語る。「紋別高校さんは熱い気持ちを全面に出してぶつかってきていました。自分たちに今足りていないのは、相手に向かっていく姿勢や気持ちの強さ。紋別高校さんと試合をさせていただく中で、改めて気付くことができました。自分が先頭に立って引っ張って、もっとチームワークを深めていきたいです」。

 紋別合宿から始まった新チームは、1年後の夏に向けて、どのような成長を遂げていくのか――。25日の準決勝では、今夏ベスト4の横浜創学館と対戦する。ここを勝ち抜けば、秋季関東大会出場が決まる。緊張感のある試合を重ねながら、チーム力を高めていく。

(大利実 / Minoru Ohtoshi)

○著者プロフィール
大利実(おおとし・みのる)1977年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、スポーツライターの事務所を経て、フリーライターに。中学・高校野球を中心にしたアマチュア野球の取材が主。著書に『高校野球継投論』(竹書房)、企画・構成に『コントロールの極意』(吉見一起著/竹書房)、『導く力-自走する集団作り-』(高松商・長尾健司著/竹書房)など。近著に『高校野球激戦区 神奈川から頂点狙う監督たち』(カンゼン)がある。

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