「This is プロ野球!!」 伝説の“10・19”で生まれた名言、語り継ぐ近鉄戦士の本音
ダブルヘッダー第2試合、同点の9回にロッテ・有藤監督が猛抗議
近鉄が優勝するために必要な条件は、リーグ最終日での2戦2勝。1つでも敗れるか引き分けなら、すでに全日程を終えていた西武の優勝が決まる状況だった。この日、15時にスタートした第1試合では、同点の9回2死二塁から代打に出た梨田が中前適時打を放ち4-3で勝利。第2試合はわずか23分後に開始された。近鉄は7日から、13日間で15連戦という超ハードスケジュールを戦っており、ナインの体力は限界を迎えていたが、勝てば優勝が決まる一戦に死力を尽くした。
「ふだんのシーズン中なら負けても次がある。一喜一憂することはなかったが、メディアの報道は嫌でも耳に入っていた。ダブルヘッダーの第1試合でも中西コーチ(1軍打撃コーチ)は得点が入るたびに選手たちと抱き合うなど、チーム全体が最後の一戦にかけていた。仰木監督からも『お前のやることは分かっているだろ?』と。2番打者として何をしなければいけないかを、ずっと考えていました」
当時は「延長戦は4時間を過ぎて新しいイニングに入らない」という条項があり、近鉄ナインは時間とも戦わなければならなかった。試合は同点の8回にブライアントが勝ち越しソロを放ったが、その裏に阿波野がロッテ高沢にソロを浴びて再び同点。一進一退の攻防が続いていた。
近鉄は9回、冒頭の新井氏の一打を好守に阻まれ、勝ち越せなかった。そして裏の守備で事件は起こる。無死一、二塁のピンチで、マウンド上の阿波野が二塁へ牽制。高めに浮いたボールを二塁手の大石がジャンプし捕球すると、二走の古川と交錯しながらタッチ。二塁塁審はアウトを宣告したが、この判定にロッテの有藤監督がベンチを飛び出し、抗議に向かった。
「大石も受けたボールの勢いで走者がベースから離れた。これは一連の流れですから、アンパイアに従うしかない。時間制限は全員が知っている。『なんでそんなことするのか』『はやく終わってくれ』と。必要以上の抗議は正直、残念だった」
「事実かどうか分かりませんが『ロッテがわざと負けているのではないか』など西武ファンから投書が届いていたと聞きました。勝負事に熱い有藤さんですから。この日は気に入らない判定もあって、最後の最後で爆発したのではないでしょうか」