破れた思い出のグラブも「生まれ変わる」 修理専門店が目指す野球人口増加

静岡県焼津市にあるグラブ・スパイク修理の専門店「Re:Birth」の石川能さん【写真:間淳】
静岡県焼津市にあるグラブ・スパイク修理の専門店「Re:Birth」の石川能さん【写真:間淳】

静岡県焼津市「Re:Birth」 全国的に珍しいグラブ修理専門店

 思い出をよみがえらせ、思いをつなぐ。静岡県焼津市のグラブ・スパイク修理専門店「Re:Birth」は、練習で破れてしまったグラブ、父から息子へ引き継ぐグラブ、友人の形見のグラブなど、様々な理由で依頼を受ける。ただ直すだけではない、それぞれのプレーや思いに応える修理を心掛けている。

 マグロやカツオで有名な港町、焼津市にある「Re:Birth」。店名は日本語で再生・復活を意味する。スポーツ用品店で12年間、用具の販売やグラブの修理をしていた石川能さんが2019年に開店した。

 全国的にも珍しいグラブの修理専門店だが、決して商売として勝算があったから独立したわけではない。石川さんは「儲かる仕事ではないですよ」と笑う。生計を立てるのは難しいと分かってはいたものの、グラブは修理すれば生まれ変わる文化を世に広げる使命感や責任感が勝った。

「グラブを修理する概念がない地域は多いです。直せると知らなければ、革が破れたら買い替えるしかありません。修理すれば長く使えることを知ってもらえれば、野球をしようと考える子どもたちや保護者は増えると思うんです」

 野球人口の減少に歯止めがかからない。子どもの数自体が減り、野球以外の選択肢が増えている以上、避けられない部分はあるが、野球が選ばれない理由の一つには用具の価格がある。帽子、ユニホーム、スパイク、バット、グラブなど一式をそろえると、少年野球でも5万円から10万円はかかる。ソックスやアンダーシャツなどの消耗品、さらに体の成長や軟式から硬式への移行で買い替える用品もあるため、他のスポーツと比べて金銭的な負担は大きい。

「ただ直すだけではなく、思いを形にする修理」

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