元ロッテ里崎氏が地元・徳島に恩返し 野球教室で子どもたちに伝えた“プロの思考”

子どもたちに身振り手振りを交えて指導をする里崎智也氏【写真:荒川祐史】
子どもたちに身振り手振りを交えて指導をする里崎智也氏【写真:荒川祐史】

里崎氏が提案「チームで同級生全員のいいところを5個ずつ発表してみて」

 時折、小雨が降る中でも、子どもたちの表情は晴れやかなままだ。今回は捕手を務める9人に里崎氏から特別レッスンのプレゼントがあった。捕球ミスの少ないグラブの構え方、ストライクと判定されやすい捕球方法、二塁送球のコツなどを身振り手振りを交えて指導。日本代表として戦った名手の教えに、一緒に聞いていた監督やコーチたちも大きく頷くばかりだった。

 里崎氏と子どもたちのやりとりを温和な笑顔で見守ったのが、フィットラボの黒坂輝明社長だ。自身も野球少年だったという黒坂社長の夢は「少年野球チームを作ること」。野球や他のスポーツが社会や人に与えるポジティブな影響に感銘を受ける1人で、野球教室での経験も「子どもたちにとって宝物になってほしい」と期待した。

 野球教室の最後は、お待ちかねのトークショーと質問コーナーだ。すっかり打ち解けた雰囲気の中、里崎氏が「僕が第1回WBC優勝メンバーだって知ってた? 大谷翔平選手よりも先にエンゼルスタジアムでホームラン打ってるんだぞ」と伝えると、子どもたちは「えぇ!?」と驚いた様子だが、それもそのはず。参加者の大半は2010年生まれで、第1回WBCが開催された2006年は誕生前。これには里崎氏も「マジか……」と苦笑いだ。

「体当たりが一番痛かったのは誰?」「ロッテで仲良しだった選手は?」「警戒していたランナーは?」など次々と寄せられる質問に、笑いやジョークを交えながら答える里崎氏。その中でも「キャッチャーとして一番大切にしていたこと」について語った言葉が、子どもたちの心に大きく響いたようだ。

「キャッチャーとして一番大切なことは投手の良さを引き出すこと。相手の弱点を考えるのはその後でいい。みんなもまず、自分のチームメートの良さを知ることが大切。苦手なことは周りがカバーしてあげればいい。そこにチームとして戦う意味があるんじゃないかな。

 チームメートのいいところを10個言えたら、いいチームができるよ。10個言えるっていうことは、それだけ相手のことを考えられているっていうことだから。今度、チームで同級生全員のいいところを5個ずつ書き出して、発表してみてください。周りが自分をどう思っているのか知ると自信になるし、自分では知らなかったいいところが見つかるかもしれない。せっかくだもん、仲良く楽しく野球をした方がいいでしょ」

 徳島の子どもたちと過ごした約3時間の野球教室。途中からはすっかり地元の言葉に戻っていた里崎氏は「楽しく一生懸命やってくれたことが良かったです。一番は楽しんでくれれば、それが思い出になる。あとはわかりやすく説明して、1つでも2つでもできることが増えれば。いきなりはうまくならないので、何事もね」と語る。技術の上達も試合での勝利も、すべては楽しいと思う心がもたらすもの。里崎氏の教えはいつまでも子どもたちの心に残るはずだ。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY