築き上げたのは強力ならぬ“協力打線” 弱小軍団が強くなる…少年野球指導者の導き方
指導歴約20年の年中夢球さんが出会った忘れられないひとつの学年
負けが続くチームを強くしたい――。少年野球の指導者が抱える悩みのひとつだろう。リトルリーグなどで約20年間指導に携わり、現在は講演や書籍、SNSを通じて、指導者や保護者に経験や考えを伝えている野球講演家の年中夢球さんもその一人だった。Full-Countの定期連載第3回は、1度も勝てなかったチームが地区の準優勝にまで駆け上がった物語。弱小チームはどうやって勝利に近づき、勝てるようになったのか。
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私が指導をしたことがある小学5年生、5人のリトルリーガーの話です。上手な子が一人だけいましたが、正直、技術的にも難しいかなと思うような子もいました。もちろん、子どもたちには言ったことはありませんが、戦力的にも厳しいなぁ……と思って最初は見ていましたね。
そんな子どもたちに私もついつい「お前たち本気でメダルを取る気があるのか」と叱ってしまったこともありました。メダルとは大会の上位になればもらえるもので、みんなそこを目指して地域のリトルリーグはやっていました。当然、子どもたちは「メダルを取りたい」と。そりゃ、そう言いますよね。
メダルが欲しいのなら、練習の量を増やすから1週間考えて、また答えを聞かせてほしいと言いました。次に会った時に全員が「きつい練習でもついていきます」と言ってきたのです。みんなで話し合ったのだと思います。そこから、私も「よし!」となり、基礎練習、反復練習をスタートさせました。
言葉だけを取ると、今の時代とはズレがあるかもしれません。私は野球の練習は『量より質』だと思っています。と言ってもその質というものは、量をこなした上の『質』であることは確かです。当時の子どもたちには、とにかく素振りなどの練習をたくさんさせました。
まだメダルを獲得したことがないチームで、負けてばかりいましたが、ある時にあと1勝したらメダルがもらえる! というところまできました。けれど、選手がトンネルをしてしまって、それが失点につながり負けてしまいました。そうしたら、みんなが泣いてしまって……。次の大会も、またあと一歩のところで負けて、メダルを逃してしまいました。でも、泣いている姿は、成長の階段を上がっている証拠だなと思えました。
ヘッドコーチだった僕もいろんなことを考えてきましたが、もう指導者として手の打ちようが自分でなくなってきた感じは正直なところ、ありました。何の練習をするべきなのか。このチームを勝たせてあげることが果たしてできるのだろうか……そう思うようになってしまいました。そうしているうちに、とうとうあと2つくらいになってしまいました。