あえて子どもに求める「成果主義」 少年野球のカリスマ・辻正人監督の“時代先取り”指導
成果主義は社会に出る準備「日本も年俸制になる」
辻監督は、昨夏の全国大会で2回戦敗退に終わった要因に、持久力と実戦不足の2つを挙げている。メンバーを絞り込んだことで、レギュラーも控えも同じように課題を解決できる。
方針転換を告げられ、戸惑う保護者はいた。Aチームから漏れて落ち込む選手もいた。だが、BチームからAチームに上がるチャンスは当然ある。辻監督は「レギュラーの9人に入りたいと思ったら、全体練習以外の時間で差を縮めようと考えます。その姿勢は社会に出た時に必ず生きます」と力を込める。
見据えるのは、少年野球の限られた期間ではない。その先に長く続く「大人の世界」だ。
「社会に出たら、どれだけ頑張っても成果を上げなければ給料をもらえません。今の子どもたちが大人になる頃は、日本でも能力主義が進んで年俸制になると予想しています。自分の長所を伸ばしたり、上手い選手のまねをしたりする能力を小学生のうちからスポーツで伸ばしていけたらと考えています」
小学校低学年までは自分の力を伸ばすことに集中して構わない。だが、高学年になったらチーム内で競争して、試合では勝利を目指す選手を育成している。「低学年に勝利至上主義を押し付けるのは問題ですが、小学5、6年生は、そんなに子どもではありません。勝利の重要性が高まる時代になると感じています」。小学生を一括りにして、少年野球を語ることに疑問を投げかける。
小学校では運動会の徒競走で順位を付けず、成績表の5段階評価もない時代。辻監督は勝利を貪欲に目指し、「時代を先読みした」成果主義に舵を切った。
(間淳 / Jun Aida)