井口資仁氏が15年ぶりに米キャンプ訪問 体感した“日本との違い”やルール改正の影響
時代の流れやニーズに応じたルールの変化は「必要」
ベース拡大は二遊間の守備にも大きな影響を与えます。盗塁のベースカバーに入る時、ベースをまたぐべきか、ベースの前(ホーム寄り)に入るべきか。走者にとって広がる抜け道をどうやって防いだらいいのか、なかなか頭を悩ませそうです。オープン戦で盗塁数が増えているという話も聞きましたが、開幕後も以前より機動力を生かした戦略が増えることになりそうです。
また、極端な守備シフトが禁止され、内野手は二塁ベースを中心に左右2人ずついること、内野手は外野の芝生に守ってはいけないことになりました。これにより打率が上がる選手がどれくらいいるのかは興味深いところです。これまで守備シフトは左の強打者に対して多く使われていたので、左打者にとって有利になるかもしれない。同時に、レッドソックスのように中堅手を浅い右翼の位置に、左翼手を中堅寄りに守らせる新たなシフトを考え出すチームも増えるかもしれない。オープン戦では手の内を明かさないチームもあるでしょうから、開幕後にデータがどんな変化を示すのか一段と楽しみです。
こういったルール改正の多くは、試合時間の短縮が目的だとされています。昨季は平均3時間以上を要した試合時間が20~30分ほど短縮される見込みで、実際にオープン戦ではかなりの“時短”が実現し、僕自身も試合がコンパクトになった印象を持ちました。WBC開幕前に見に行った米国代表の練習試合では新ルールは適用されておらず、客席から「長い」という声が聞こえたほど。ファンも時短を期待しているようです。
ルール改正で野球の本質が変わってしまうという声も聞きますが、再び五輪競技になったり、本当の意味で世界中で愛されるスポーツになったりするためには、時代の流れやニーズに応じた変化は必要でしょう。日本のプロ野球も試合時間は長い。現役時代も監督になってからも、時短できる箇所はあるように感じていました。メジャーでのルール改正をすべて日本で踏襲する必要はないとは思います。ただ、広く愛されるスポーツであるための変化には前向きであるべきでしょう。15日からはフロリダに移動し、メジャーの今を学び、刺激を受けたいと思います。
(佐藤直子 / Naoko Sato)