髪型自由、勝利より成長…高校球界の“変革”へ…名門率いる指揮官たちの「挑戦」
合宿最終日のディズニーランドで笑顔弾けた選手たち
続いて、宮城・東北高校の佐藤洋監督が発言。元巨人の選手でもある佐藤監督は、昨夏に就任後、即選抜出場を果たしたが、その土台には、森林監督と同様の“高校野球らしからぬ”指導法があったと明かした。
例えば、練習メニューは選手自身で考え、投球練習の球数も選手たちで管理。髪型は丸刈りを含めて選手の自己判断だ。「東北高校で求めるのは『自立』と『自律』。毎日練習前には20~30分の道徳の時間も設けます。野球の技術うんぬん以上に『どう生きたいか』を各自そこで明確にする。つまり、“野球ばかり”にならないような取り組みをしているんです」と語る。
大切にするのは、選手たちの“笑顔”だ。選抜大会前に千葉・鴨川市で実施した合宿では、最終日にチームで東京ディズニーランドを訪れた。東日本大震災の被災地、宮城・南三陸町を訪れた時も、震災時の状況を学んだ後に皆で海水浴に出かけた。「賛否両論ありますが、その時の生徒たちは高校生らしい弾けた表情を見せるんです。野球だって、怒られて険しい顔をしながらするものではない。同じように笑顔でプレーしていいんだよと」。
本来のスポーツの目的とは『楽しむ』ことのはずだが、高校野球はどうしても監督が抑圧的に指導するイメージが強い。しかし、そうした指導は多様性の時代には合わないし、今の子どもたちの力を引き出すには難しい。佐藤監督は「WBCの代表選手たちにも悲壮感は感じられなかった。時代の変化、常識の変化に、高校野球もついていかなければいけません」と警鐘を鳴らす。
「子どもたちを信じて、任せる。笑顔を引き出す指導が、この夏の大会にどう出てくれるのか、私自身も楽しみです」と佐藤監督。慶応高校と東北高校、両名門の“選手ファースト”の指導が、高校球界にどんな化学変化をもたらすのか、注目したい。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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