「見返してやろう」”最弱世代”の下剋上 女子高校野球初の3冠を支えた強い意志
有言実行で3季連続優勝を成し遂げた堅守の神戸弘陵
女子高校野球史上初の「秋春夏連覇」は、“最弱世代”の下剋上だった――。阪神甲子園球場で1日、第27回全国高等学校女子硬式野球選手権大会の決勝が行われ、神戸弘陵(兵庫)が8-1で岐阜第一(岐阜)を下した。女子高校野球の「3大大会」と呼ばれる秋のユース大会、春の選抜大会、夏の選手権大会を1年のうちにすべて制した同校。石原康司監督は「本当に夢のようだし、すごい快挙を成し遂げてくれた」と選手たちを称えた。
性別の枠を除けば、松坂大輔氏(元西武、レッドソックス)を擁した1998年の横浜(神奈川)以来、史上2チーム目の「秋春夏連覇」である。とはいえ、松坂氏ほどの怪物を擁していたわけではない。2014年の創部時から指導している石原監督は、「力がなく、入学した時から見劣りしていました。手応えのないチームだったんです」と振り返る。これまで何度も、選手たちへ“最弱世代”と伝えてきた。
しかし、新チーム結成時に選手から聞かされた目標は、3季連続優勝の「3冠」。あまりに高い目標設定に指揮官は、「そんなに甘くないよとは言うてましたけど……」と苦笑い。だが、ユース大会で優勝すると、その後も「1つ上の先輩たちが決勝で負けている選抜でも勝ってしまった」と、決勝を含む5試合無失策、無失点での全国制覇。さらに今夏も、決勝を含む6試合でわずか4失点、2失策の手堅い野球で頂点に輝いた。
史上最高の成績を収めた“最弱世代”を支えたのは、「見返してやろう」という強い意志。主将の三村歩生内野手(3年)を中心にミーティングを重ね、積もり積もった悔しさを糧にして、勝利への執念を燃やした。石原監督は「松坂投手みたいな選手を擁しているわけじゃないし、むちゃくちゃ打つわけでもない。そういう子たちがチーム一丸でやってきて、守りを中心にして3冠を達成できたということは、いろんなチームの希望になれると思います」と語った。
甲子園などの大舞台が用意され、年々参加チームが増加していることにより、ライバルチームとの競争が激化しつつある女子高校野球。3年目を迎えた甲子園での決勝進出をかけた戦いでは、岐阜第一の2年生エース・桑沢明里投手(2年)が、福井工大福井戦で延長11回タイブレークの末、158球を投げ抜く熱戦もあった。「それぞれのチームがレベルアップしていると思います」と指揮官。そんな中、大健闘で偉業を成し遂げた“最弱世代”を称え、その引退を惜しんでいた。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)