指名漏れ、忘れぬ帰り道の悔し涙 巨人・大勢も認めるドラフト“隠し玉”…覚醒の転機

香川オリーブガイナーズ・赤尾侑哉【写真:喜岡桜】
香川オリーブガイナーズ・赤尾侑哉【写真:喜岡桜】

軟式チームから香川OGへ…赤尾は今季奪三振率11.57をマーク

 四国アイランドリーグplus・香川オリーブガイナーズに所属する赤尾侑哉投手は、最速152キロを誇るドラフト注目右腕だ。軟式チームに所属していた昨年も、候補に挙がりながら指名漏れ。その悔しさを胸に、独立リーグで1年間レベルアップを図ってきた。次はもう1つ上の舞台で「応援してくれる人たちのためにも挑戦したい」と意気込んでいる。

 昨年10月20日、12球団すべてのドラフト指名が終わると、香川県の軟式社会人チーム・四国明治に所属していた赤尾は、「ありがとうございました」と深々と頭を下げた。多くの社員が帰宅せず、門出を祝おうと社屋に残ってくれていたが、無念の指名漏れ。「家に帰る途中で、悔しくて涙が出ちゃって」。一人暮らしの狭い部屋にポツリと座り、頬を濡らしながらゆっくりと現実を受け止めた。

 中学まで軟式野球部に所属し、高校は甲子園春夏通算15回出場の古豪・坂出商へ。当時は130キロ台のストレートで押す「並み以下のピッチャー」で、最後の夏も三本松に敗れて県大会初戦で姿を消している。関西国際大でも野球を続けたが、付いていくだけで必死のレベル。大学限りで硬式に見切りをつけ、軟式の四国明治へ進んだ。

 しかし、入社してわずか2か月後、軟式球で自己最速151キロを計測した。飛躍のきっかけはダイエットだったという。「痩せようかなと思ってめちゃくちゃ体重を落としました。筋トレをして身体を鍛えて、84キロから72キロくらいまで落としたら、ボールが速くなったんです」。たちまちドラフトの“隠し玉”へと急浮上した。

香川県の軟式社会人チーム・四国明治時代の赤尾侑哉【写真:喜岡桜】
香川県の軟式社会人チーム・四国明治時代の赤尾侑哉【写真:喜岡桜】

持ち味のストレートだけでなく変化球にも磨きをかけた

 昨年10月の巨人の新人テストでは打者3人から2三振を奪い、大学の同級生の大勢投手から「もう“受かる”みたいなテンション」で連絡を受けたという。無念にもNPB入りは叶わなかったものの、硬式へ再挑戦するのに十分な自信を得た。四国IL・香川への入団を決め、万全の状態で挑むために肘の手術にも踏み切った。

 そして今季、開幕には出遅れたものの35試合に登板。最速は152キロと1キロ伸ばし、防御率は1.82、奪三振率はリーグ2位の11.57をマークした。持ち味のストレートだけでなく変化球にも磨きをかけ、硬式でも通用することをしっかりと証明してみせた。

「(去年)指名されなかったのは、運とかチームの事情とかいろんなことがあると思うので、しょうがない。でも僕はまだ若いのでチャレンジする時間はある。プロに入れるって思ってくれた人や、応援してくれる人たちのためにも挑戦したいなと思いますし、違う道に進むことになったとしても、野球で鍛えられた向上心で恩返しをしていきたいです」

 香川の一員になった今も、赤い「meiji」のロゴが刻まれた濃紺のポロシャツを着ている。指名漏れの悔しさを忘れることなく、さらに「現状維持では満足できない」と、宮崎で行われているフェニックス・リーグに参加中。どんな運命が待っていたとしても、未練は残さない。26日に開かれるドラフト会議まで、あの日の悔し涙を忘れずに腕を振るう。

【実際の動画】最速152キロの唸る直球&急激落下の変化球… 軟式出身の“隠し玉”赤尾侑哉の完成度高い投球

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