東大、涙の終戦…目標の「最下位脱出」に足りなかったもの 絞るべき“ターゲット”

東大・松岡由機【写真:中戸川知世】
東大・松岡由機【写真:中戸川知世】

法大2回戦では松岡が2失点完投し価値ある1勝

 東大は22日、東京六大学野球秋季リーグの立大2回戦に2-4で惜敗。勝ち点0、1勝10敗(勝率.091)で今季全日程を終了し、1998年の春以降52季連続最下位となった。今月8日の法大2回戦で白星を挙げたものの、今年の目標に掲げていた「最下位脱出」を果たせなかったのは、なぜか……。

 試合終了後の記者会見。2浪を経て念願の東大野球部入りを果たし、4年間の戦いを終えた別府洸太朗外野手はすすり泣き、主将の梅林浩大内野手(4年)は何度も声を震わせた。病気療養中の井手峻監督の代行として1年間指揮を執った大久保裕助監督の目尻にも、光るものがあった。

 先発の鈴木健投手(4年)が初回にいきなり3点を失ったが、打線は4回に4安打を集めて2点を返し、なおも2死ニ、三塁の1打逆転のチャンスをつくった。しかし、代打の中山太陽外野手(2年)が空振り三振。5回と6回にもそれぞれ1死一、二塁の得点機があったが、あと1本が出ず。逆に6回裏、立ち直っていた鈴木健が追加点を許し、突き放された。

 今季の東大は松岡由機投手(4年)が法大2回戦で9回を7安打2失点に抑えて完投し、4-2で勝利。鈴木健、平田康二郎投手(3年)が好投した試合もあり、投手力は例年以上に安定していた。打線も22日現在リーグ12位の打率.316をマークしている酒井捷外野手(2年)、同14位の.308の大井温登内野手(4年)をはじめ、好打が目立った。投打が噛み合えば、勝機は十分にあった。

 だからこそ、主将の梅林は「1年前に目標として掲げた『勝つべき組織をつくること』『チーム全員で勝利に向かうこと』は、できたのではないか」と納得しつつ、「自分としてもチームとしても、もう少しやれたのではないかと思う。悔しいです」と涙が止まらないのだ。

梅林主将「後悔はないけれど、下級生に伝えたいこと」

 法大から1勝を挙げ、手応えを持って、最後に立大と勝ち点0同士のカードに臨んだが、2試合続けて打ち負けた。梅林は「最下位を脱出するということは、六大学で5番目になるということで、どこか1つを抜かなければならない。その1つが定まっていなかったので、目標が漠然としていた」と振り返る。

「今回たまたま最下位争いをしたのが立教大学さんでしたが、仮に(開幕前に)どこかの大学をターゲットにして、その大学を超える練習をしよう、その大学に劣っている部分を強化しようと、1年前に設定していたら、違う結果が出ていたのではないか」と分析し、「1年前の時点でベストだと思ったことをやってきたので、後悔はありませんが、今年の反省として下級生に伝えるとすれば、そういうことかなと思います」と来年へ託した。

 甲子園出場レベルの選手が集まる他大学に比べ、東大が総合力で劣るのは、いかんともしがたい。とすれば、東大の特長を最も発揮しやすい相手はどこかを研究し、1チームに絞って徹底的に対策を練ることが、目標の最下位脱出を達成し、存在感を示す近道なのかもしれない。

 大久保助監督は「今年は投手がしっかりしていたので、接戦に持ち込むことができたし、1勝できた。来年はそこがしんどいかなと思う」と展望。「ウチの場合はまず、この神宮で相手と互角に戦えるチームをつくること。四球やエラーで自滅しないことを徹底し、地道に守りを固め、攻撃に足を絡めるスタイルでいくしかないと思います」と決意を新たにした。悲願成就を目指し、新たなチームづくりが始まる。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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