井納の剛速球“捉えた”女子…巨人OB騒然「すごいな」 レジェンド認めた逸材21歳

「4番・遊撃」で出場した巨人女子・中村柚葉【写真:荒川祐史】
「4番・遊撃」で出場した巨人女子・中村柚葉【写真:荒川祐史】

今年から本格始動したジャイアンツ女子チームの中村柚葉内野手

 巨人の「第1回ジャイアンツ祭り レジェンドOB vs ジャイアンツ女子チーム」が12日に静岡草薙球場で行われ、ジャイアンツ女子チームが8-1で大勝した。原辰徳前監督や“怪物”こと江川卓氏、高橋由伸元監督ら豪華なOBがズラリと顔をそろえた相手を圧倒。実はレジェンドたちを最も仰天させたのは、4番打者が放った1本のファウルだった。

 ジャイアンツ女子チームは今年から本格始動し、夏の全日本女子硬式クラブ野球選手権で初出場初優勝を飾った。9月から4番に座っているのが、中村柚葉(ゆずは)内野手だ。ジャイアンツアカデミー出身で、花咲徳栄高、埼玉アストライア、京都文教大を経て今季からプレー。この日も「4番・遊撃」でスタメン出場し、初回に無死一、二塁からレジェンドOBの左腕・高橋尚成氏から右中間を破る2点三塁打を放った。

 2回1死三塁での第2打席では左犠飛。5回先頭での第3打席も左前打。しかし、OBを唸らせたのは第4打席だった。6回、レジェンドOBはすでに7点差をつけられ、なおも2死二塁のピンチを背負うと、なりふり構わず“切り札”を投入した。昨年まで現役投手で、まだ37歳の井納翔一氏である。投球練習の段階から、場違いなほど速い球を投げ込んでいた。

 井納氏の初球はいきなり140キロを計測したが、右打者の中村はバットを合わせ、一塁側のスタンドへファウルを放った。その瞬間、スタンドからもレジェンドOBベンチからもどよめきが起こった。女子野球では130キロ台のスピードボールを投げる選手は稀で、ましてや140キロは“異次元レベル”なのだ。「打席で140キロを見たのは、人生で初めてです。投球練習を見ていて、めちゃくちゃ速いなと思って少し不安でしたが、こんなにもたくさんの方々(6300人の観客)が応援に来てくださっていて、女子野球の魅力を伝えるとしたらここだなって、気持ちを奮い立たせました」と、中村は笑顔を浮かべた。

「4番・遊撃」で出場した巨人女子・中村柚葉【写真:宮脇広久】
「4番・遊撃」で出場した巨人女子・中村柚葉【写真:宮脇広久】

中畑清氏「レベルが高いとは聞いていたが、ここまですごいとは思わなかった」

 結局、中村はファウルを2本打ったものの、カウント0-2から4球目の高めのストレートを空振りし三振。それでもレジェンドOBの監督を務めた中畑清氏は「井納の140キロのボールを当てて、最後は三振していただきましたけれど、その雰囲気とか、われわれが『こいつはすごいな』と感じるものがあった。みんなベンチで騒いでいたよ」と興奮を隠せなかった。

 中村は「試合終了後、挨拶にうかがったら、中畑さんから『すごくいいスイングだ。これからも頑張って』とほめていただいて、握手もしていただいて、すごくうれしかったです」と感激の面持ち。27日に22歳になる中村には、伸びしろもありそうだ。

 この日はジャイアンツ女子のパワーとスピードに、歯が立たなかったレジェンドOB。中畑氏は「事前に(高橋)由伸から『女子野球のレベルはものすごく高い』と聞いていたが、ここまですごいとは思わなかった」と吐露し、「(レジェンドOB vs ジャイアンツ女子は)来年以降も続くかもしれないな。これ、面白いよ。で、1回勝ちたいな。キャンプを張ってから臨まないとダメだな」と笑わせた。

 中村は「私が小、中学生の頃から諦めずに野球を続けてこられたのは、当時女子プロ野球のすごい方たちがいたからです。今度はジャイアンツ女子チームが、女子野球を頑張っている子どもたちに夢を与える番だと思っています」とうなずく。3打数2安打3打点の活躍と、140キロをバットでとらえたファウルは、その役割を十分に果たしたと言えそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

JERAセ・リーグAWARD

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY