徹夜でデータ作成、朝5時半から練習補助 日本一の慶大…“試合に出ない”4年生の献身

20日の決勝戦での勝利に沸く慶大【写真:中戸川知世】
20日の決勝戦での勝利に沸く慶大【写真:中戸川知世】

慶大は2019年以来、5度目となる明治神宮大会優勝を果たした

 慶大(東京六大学代表)は20日に行われた「第54回明治神宮大会」大学部の決勝で、青学大(東都代表)を2-0で下し、2019年以来5度目の優勝を果たした。堀井哲也監督は2人の“ドラ1右腕”が在籍する難敵を撃破したナインを称え、学生たちの成長する姿に感銘を受けていた。

 試合は7回まで無得点が続く投手戦も、ワンチャンスをものにした。8回に相手の連続失策で1死一、二塁の好機を作ると、阪神ドラフト1位の下村海翔投手(4年)が2者連続四球の押し出しで先制に成功。さらにソフトバンク3位の廣瀬隆太内野手(4年)が、広島1位の常廣羽也斗投手(4年)から右犠飛を放ち追加点を奪った。

 投げては2年生エースの外丸東眞投手が5安打完封。守り勝つ野球で頂点を掴んだ堀井監督は「リーグ優勝はホッとした気持ちでしたが、今回は嬉しい気持ち。ピンチでもひるまず守ってくれた」と、喜びを口にした。

 順風満帆ではなかった。新チームで前年からレギュラーを張ったのは主将の廣瀬と宮崎恭輔捕手(4年)の2人だけ。春のリーグ戦では開幕2カード連続で勝ち点を逃し、最終的には3位に沈んだ。それでも指揮官は「スタートで出遅れたが、勝ち点3で粘り切ったのが夏から秋に繋がった」と、手ごたえを感じていた。

 秋のリーグ戦は優勝をかけた早慶戦を2勝1敗で制すなど、全チームから勝ち点を挙げる完全優勝を成し遂げた。チームの成長を実感したのは7月の第1週だったという。「僕からは一言も言ってない。4回生が自主的にそれぞれの役割を決めて進んだ。それを聞いて素晴らしいなと思った」。最後まで選手を目指すもの、学生コーチやデータ班としてサポート役に徹するもの。チームの勝利のために最上級生が自ら動く姿に心を奪われた。

「夜寝ないでデータを作成したり、朝5時半から起きてトスを上げたり」

「本当に凄いと思う。夜寝ないでデータを作成したり、球種の割合とか。朝5時半から起きて、選手のために打撃投手、トスを上げたり。試合に出ない4年生の力は凄い」

 三菱自動車岡崎、JR東日本と社会人の名門を指揮した堀井監督は2020年から母校・慶大の監督に就任。社会人から学生の違いについては「若さゆえの不確定なメンタルはあるが、それ以上に学生の成長や爆発力に驚きを感じる。毎日びっくりすることばかり」と、無限の可能性を感じているという。

 企業の看板を背負う社会人野球は、ある意味プロ野球以上に勝利を求められる。一方で大学野球は学業を含め、4年間の成長を求められる場所。「学生は大学野球を経験して、どう次の社会に繋げていくか。勝つこと以上に、学生としてしっかりと充実した生活を送ってくれれば。ちょっと失敗して負けても経験。どういう取り組みをしたかを重視するようになった」と、指導の変化を口にする。

「今回は4年間一緒にやってきたメンバー。2年前(全日本大学選手権)も嬉しかったが今回はまた格別。皆でチームを作っていった。そんな感慨深いものはあります」

 大学生活最後の舞台で有終の美を飾った慶大。堀井監督は最後まで4年生を誇らしげに見つめていた。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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