大学から硬式→プロ志望届提出 清原正吾に詰まった可能性…指揮官が明かす進化

明大戦で本塁打を放った慶大・清原正吾【写真:小林靖】
明大戦で本塁打を放った慶大・清原正吾【写真:小林靖】

28日の明大戦で清原正吾が初アーチ…1点を追う9回2死で劇的弾

 慶大の清原正吾内野手(4年)が28日、神宮球場で行われた東京六大学野球秋季リーグの明大1回戦に「4番・一塁」で出場し、念願のリーグ戦初本塁打を放った。通算83打席目で飛び出した一発に、NPB通算525本塁打を記録した父・和博氏もネット裏で感激の面持ち。左手で瞼を押さえる一幕があった。

 まさに起死回生弾だった。2-3とリードされ、9回2死走者なしの崖っぷち。清原自身、それまでは3打席無安打2三振と散々だったが、明大5番手の右腕・大川慈英投手(3年)が投じた初球のカットボールが真ん中高めに浮いたところを逃さなかった。フルスイングで捉えた打球は、バックスクリーン左に飛び込む同点ソロとなった。慶大は敗戦を免れ、3-3の引き分けに持ち込んだのだった。

 清原は「大学野球を始めた時からの目標として、ホームランボールを両親にプレゼントすると掲げてきたので、やっとですけれど、うれしいです」と破顔一笑。中学、高校時代は野球から離れ、本格的な野球経験は、小学生時代の軟式くらいだった。慶大進学を機に硬式野球を始めたが、「最初は硬球を怖がっていた」(堀井哲也監督)。そこから4年足らずで、ここまで成長を遂げたことは驚異的だ。

 堀井監督によると、清原はこれまで3段階の成長を遂げてきた。「まず、ストレートに負けなくなった。次に、甘い球にどんどん手が出るようになった。そして、ここに来てインコースをさばけるようになりました」。苦手にしてきた内角球に対応できるようになったからこそ、精神的な余裕を持ち、甘い球を高い確率でとらえられるようになった。

 さらに「今日も外角の変化球には苦しみましたが、そこも克服してくれるのではないかという期待があります」と付け加える。確かにこの日、2回先頭での第1打席は、先発右腕・高須大雅投手(3年)に対して3球三振。外角変化球を空振り→内角速球をファウル→再び外角変化球を空振りと翻弄された。

課題は外へ逃げる変化球も…堀井監督「克服してくれるのではないか」

 第2打席は遊ゴロ。2-2の同点で迎えた6回には、2死二塁の一打勝ち越し機で第3打席を迎えたが、右横手投げの3番手・山田翔太投手(4年)に、外角スライダーを4球続けられた。見送ってボールとなった3球目以外は全てバットが空を切り、空振り三振。いずれもストライクゾーンからボールになる軌道で、じっくり選んでもよさそうだが、清原には成長の秘訣として「バットを振らなければ、感覚がわからない。とにかくスイングをかけて、体で覚えていくことだと思っています」という考えがある。

 外角へ逃げていく変化球への対応は課題として残るが、これまでの急成長ぶりからすると、意外に早く克服してしまうのかもしれない。何よりも普通なら、外角変化球への警戒で頭がいっぱいになりそうな9回の土壇場で、甘いストレート系をとらえる準備ができていたメンタルが凄い。

「それまでの3打席が情けない結果だったので、4番として仕事をしなければと覚悟を決めて、腹をくくって打席に入りました。僕がやるしかない、僕が決めてやるという気持ちでした」

 清原は「3打席凡退していましたが、それ以上に練習してきたという自負、自信があったからこそ、第1号を打てたのかなと思います」とも語った。希代のホームランアーチストの息子とはいえ、遺伝子だけでこれほどの短期間に、打てるようになるはずがない。今月12日にプロ志望届を提出済み。10月24日のドラフト会議で指名されるかどうかは現時点で未知数だが、驚異の“成長力”を評価する球団があってもおかしくない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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