清原正吾は“指名漏れ”も…募るプロへの思い 奮起する東大・2世投手「父親を超えたい」

立大戦に登板した東大・渡辺向輝【写真:加治屋友輝】
立大戦に登板した東大・渡辺向輝【写真:加治屋友輝】

2世投手が狙うプロの世界…東大・渡辺向輝が迎える運命の1年

 24日に行われた「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」では、NPB通算525本塁打を誇る清原和博氏の長男で、プロ志望届を提出していた慶大・清原正吾内野手が指名漏れとなった。無念さが残ったが、来年のドラフトへ向けプロへの思いを打ち明けた、もう1人の“2世選手”がいる。かつて独特のアンダースローで一世を風靡した元ロッテ投手・渡辺俊介氏(日本製鉄かずさマジック監督)の長男、東大・渡辺向輝(こうき)投手(3年)だ。

 今季から東大の先発投手陣に加わった渡辺は、13日の法大2回戦で、自身のリーグ戦初勝利を9回2失点完投で飾った。26日の立大1回戦でも、好投して9回2死一塁の場面まで2-1とリードしていたが、柴田恭佑内野手(4年)にまさかの逆転サヨナラ2ランを右翼席へ放り込まれた。

 それでも渡辺は試合後、報道陣を前に「可能性があるなら(プロ志望届を)出してみたい気持ちはあります。来年になってみないとわからないですが、現実を見ながら考えたいと思います」と胸の内を明かした。今春までは短いイニング限定の中継ぎだったが、夏場に急成長を遂げ先発入り。「しっかり抑えられるようになってきて、(野球を)続けられるなら続けてみたいと思うようになりました」と言う。

 ただ、社会人野球や独立リーグでプレーする意思は無いようで、「野球を続けるのであれば、父親を超えたいという思いが常にあります。もしプロの可能性があるのなら、続けたいと思います」。東大農学部在学中の渡辺の将来には、様々な選択肢がありそうだが、父が活躍したプロ野球への憧れは、そう簡単に捨てられるものではないようだ。

 父の俊介氏は現役時代、ロッテで通算87勝。2006年と2009年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、野球日本代表の貴重なピースとして大会連覇に貢献した。一方、渡辺は東京・海城高時代までオーソドックスなオーバースローだった。アンダースローに転向した当初は「父の投球フォームを参考にしたことはありません。アドバイスも無視しています」と意地を張っているようにも見えたが、今季から長いイニングを任され、素直に父に教えを聞くようになった。

東大OB・小林至氏「他の投手と軌道が違うところが最大の武器」

 球種は主にストレート、シンカー、スライダーの3種類。球速はどれを投げても、110~120キロを計測することが多い。プロのスカウトの1人は「お父さんの俊介さんには、80キロ台のふわっと来るスローカーブがあって、投球のアクセントになっていた。向輝くんにもそういう球があればいいのだが……」と指摘する。

 また、この日のネット裏観客席には、かつて東大の左腕投手として活躍し、1991年ドラフト8位でロッテ入りして2年間在籍した小林至氏(桜美林大教授)の姿があった。「なんといってもアンダースローで、他の投手と軌道が違うところが向輝くんの最大の武器だと思います」と指摘。プロで活躍する可能性についても「速い球と遅い球に30キロ差をつけられるようになったら、通用するのではないでしょうか」と語った。

 渡辺も自身の課題は認識している。「現状でストレートの最速は127キロ。(来年のドラフトまでに)3〜5キロ上げたいと思っています。それに、今日は使う必要がないと判断して、制球しやすい球種を優先しましたが、遅いカーブの練習はしています」と明かした。

 来年のドラフト会場に「渡辺向輝、投手、東京大学」のアナウンスは響くのか。1年間のチャレンジの行方が今から楽しみだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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