赤字800億円、選手は若手だけ、予選は超激戦区…16年ぶり活動再開 名門が嵐の船出

会見に臨んだ日産自動車の選手22人【写真:尾辻剛】
会見に臨んだ日産自動車の選手22人【写真:尾辻剛】

日産自動車野球部、新体制発表…選手は大卒2年目1人、大卒1年目21人

 日産自動車の野球部が17日、新たなスタートを切った。拠点となる神奈川・横須賀市の同社追浜工場で新体制を発表。伊藤祐樹監督ら首脳陣と選手22人が出席し、名門復活へ強い意気込みを示した。

 チームは1月14日、16年ぶりに活動を再開。伊藤監督は「歴史ある野球部が復活する。どう仕上げるかプレッシャーはありましたが期待できる選手が集まった。今は不安な気持ちはありません。楽しみで仕方がない」と現在の胸中を明かした。

 選手は茨城日産から転籍した23歳の石毛大地外野手以外の21人は大卒1年目となるフレッシュな構成。都市対抗の西関東予選が控える神奈川は、昨年の都市対抗を制して予選免除となる三菱重工East以外にもENEOS、東芝など強豪ひしめく激戦区で、指揮官も「力の差は否めない」と苦しい戦いを覚悟する。

 それでも目標には活動再開1年目からの都市対抗出場を掲げる。「相手もやりづらいと思う。自分たちからコケることがないように、相手の小さな穴に飛び込んでいけるように準備して挑んでいきたい」。激戦区を勝ち抜けば頂点も見えてくる。「神奈川には強豪がいっぱい。都市対抗に出た暁には、補強選手にも手伝っていただいて“あれっ、勝っちゃった”と言えるように頑張りたい。可能性は無限大です」と前向きだ。

 ただ、田川博之ゼネラルマネジャー(GM)が「特にこの半年間、非常に厳しいものになってきた」と説明するように、取り巻く状況は険しい。日産は13日に、2025年3月期の最終損益が800億円の赤字となるとの見通しを発表。赤字は4年ぶりで、ホンダと進めていた経営統合に向けた協議も打ち切られる中での“嵐の船出”となる。

 1959年に創部した野球部は都市対抗に29度出場し、2度の優勝を誇る。日本選手権にも16度出場。広島でプレーした梵英心氏(現阪神コーチ)やオリックス、ロッテでプレーした川越英隆氏(現ソフトバンクコーチ)、西武や巨人でプレーした野上亮磨氏(現巨人コーチ)らを輩出しているが、業績不振で2009年いっぱいで休部となった経緯があるだけに、悲壮感も漂う。

 経営再建の一助となるよう、伊藤監督は「我々がシンボルチームとなるべく、地に足をつけて邁進していく」と宣言した。スローガンは「再翔」。文字通り、再び高く羽ばたけるか。“逆風”の中、一歩ずつ名門復活への羽を広げていく。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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