田口・廣岡の電撃トレード、その本質とは? データ分析の視点から見る両球団の思惑
正遊撃手不在のヤクルト、廣岡の放出には大きなリスクも…
3月1日に巨人とヤクルトの間で田口麗斗投手と廣岡大志内野手のトレードが成立し、両球団から発表された。田口は2016、2017年と2年連続で2桁勝利を挙げ、昨季も先発・救援と活躍した左腕。廣岡は二遊間を守ることができる長距離打者という、球界でも希少な若手有望株だ。このトレードはデータ分析の視点から見ると、どのように解釈できるのだろうか。両球団の思惑について推察したい。
まず、このトレードについて、ヤクルトの小川淳司GMの「投手陣の強化を優先した」というコメントが伝えられている。ヤクルトは昨季の1試合平均失点がリーグワーストの4.91点。こうした状況の改善を狙って田口の獲得を望んだのだろう。田口は十分な実績があり、かなりの高確率で一定の貢献が期待できる選手だ。
2020年セ・リーグの1試合平均失点
巨人 3.51
阪神 3.83
中日 4.08
DeNA 3.95
広島 4.41
ヤクルト 4.91
ただ、廣岡の放出には大きなリスクが伴う。まず考えなければならないのが、近年におけるヤクルトの遊撃手の状況である。ヤクルトは長年、正遊撃手不在の状況が続いていた。2018年に西浦直亨が遊撃手として127試合に出場。正遊撃手が生まれたかに思われたが、2019年には再びレギュラー不在の状況となり、大きな課題となった。これを受けて昨季はアルシデス・エスコバーを獲得。外国人選手によっての問題解決を図ったが、思うような成果は挙げられなかった。
ヤクルトの遊撃手はどの程度のレベルにあるのか、まずは昨季時点の状況を把握してみよう。ここでは総合指標WAR(※1)を使って、他球団の遊撃手との貢献度の比較を行ってみる。WARとは、1軍半レベルの選手が同じだけ出場した場合に比べ、その選手がチームの勝利をどれだけ増やしたかの貢献量を推定する指標である。これで見ると、昨季ヤクルト遊撃手のWARは-0.5。WARの基準となる0は1軍半レベルに設定されているが、それを下回る数字で、リーグで最も悪く、大きな弱点となっていたことがわかる。