JR仙台駅の横断幕がつなげた絆… 押し出し四球で甲子園逃した柴田元エースの思い
2013年夏は決勝の仙台育英戦で押し出し…「甲子園に行きたかったですよ」
第93回全国高校野球選抜大会に初出場し、24日に京都国際との初戦を迎える柴田(宮城)。JR仙台駅には出場を祝う横断幕が設置されている。JR東日本仙台支社と学校の橋渡しをしたのは、2013年夏の宮城大会で同校を準優勝に導いた時のエースで、同社社員の岩佐政也さんだ。昨季でJR東日本東北野球部を引退した岩佐さんは「甲子園ではこれまで練習してきたことを発揮してもらいたい」とエールを送る。
JR仙台駅。西口と東口を結ぶ2階の東西自由通路の西口出入り口で柴田のセンバツ出場を祝う横断幕が輝きを放っている。縦1.8メートル、横10メートルの大きな横断幕は、行き交う市民や利用者の目を引く。
「柴田の卒業生など、SNSに写真を載せている人もいて嬉しいですね」
そう話すのは、柴田の卒業生である岩佐さんだ。社会人野球のJR東日本東北の投手として3年間プレーし、昨季で引退。現在はJR新庄駅に勤務しており、宮城県の実家に帰省した際、JR仙台駅に寄って母校の横断幕を目に焼き付けた。
岩佐さんは中学時代、宮城県選抜に選ばれ、その時のチームメートらと柴田に進学。3年生だった2013年夏、宮城大会準優勝に貢献した。同校11年ぶりの決勝の相手は仙台育英。明治神宮大会で優勝しており、同学年のメンバーには上林誠知(ソフトバンク)、馬場皐輔(仙台大-阪神)、熊谷敬宥(立大-阪神)とのちにプロ入りした選手が3人、小林遼(富士大-ENEOS)、長谷川寛(早大-北海道ガス)ら社会人野球でプレーすることになる選手が多数いた。
そんな仙台育英との決勝で柴田は、初回に馬場から5点を奪取。エースの岩佐さんは3回までヒットを1本も許さず、チャンスを与えなかった。しかし、中盤から握力が低下し、リリースポイントがズレはじめた。5-3の8回、上林の本塁打で1点差とされると、2死から同点に追いつかれた。9回表に加点できなかった柴田。その裏、二死満塁とされ、小林にカウント3-1から岩佐さんが投じた147球目、「あッ」と思ったという直球は外角高めに外れた。押し出し四球。柴田はサヨナラ負けを喫し、甲子園に届かなかった。「甲子園に行きたかったですよ。でも…」と岩佐さん。
「仙台育英には秋の県大会でコールド負けし、春は1-2で負けました。神宮大会優勝で日本一にもなっているチームですからね。なので、甲子園に行きたいというよりも仙台育英に勝ちたい、仙台育英を倒したいという気持ちの方が、高校時代は強かったように思います。でも、もしもあの時、仙台育英に勝って甲子園に出場していたら、それだけで満足していたかもしれない。それくらい、あの時の仙台育英は大きな存在でした」