10年間の指導で肩肘の故障者ゼロ 元近鉄の高校野球監督が取り入れる「仕事量」
現役時代は東海大相模で選抜準優勝投手 浜松学院の吉田道監督
少年野球では「怪我の低年齢化」が大きな課題となっている。最近では球数制限を設けるなど肘や肩を故障するリスクを減らす動きが加速しているが、最大の問題は指導者の意識にある。東海大相模のエースとして選抜高校野球大会で準優勝してドラフト2位で近鉄に入り、現在は静岡県の浜松学院高校を指揮する吉田道(よしだ・とおる)監督は「仕事量」で選手のコンディションを把握。就任してからの10年間、怪我で選手が欠場したことは一度もないという。
浜松市にある浜松学院高校の野球部を率いて10年が経つ。吉田道監督は「唯一の自慢」を明かす。「エースはもちろん、選手が肘や肩を故障して公式戦に起用できなかったことは一度もないんです」。練習や試合で投球や打球が体に当たるなど、避けるのが難しい故障はある。だが、“消耗品”の肘や肩は、指導法や練習法でそのリスクが大きく変わる。年代を問わず少年野球にも通ずる。
吉田監督は東海大相模のエースとして1992年の選抜高校野球大会で準優勝し、ドラフト2位で近鉄に入団した。だが、右肘と右肩の故障に悩まされ、1軍登板がないままプロ生活は4年間で幕を閉じた。吉田監督は、怪我で野球ができない苦しさ、怪我をすれば勝負のスタート時点にすら立てないもどかしさを知っている。だからこそ、高校野球の指導者になった今、選手のコンディション管理に気を配っている。
吉田監督が導入しているのは、選手の「仕事量」。約18メートルの距離があるマウンドからホームまで1球投げると、仕事量を18と計算する。10球投げれば180。捕手が約38メートル離れた二塁ベースまで5球投げれば、38×5で仕事量は190になる。選手の体格やタイプによって多少の違いはあるが、吉田監督は自身の経験などから、選手1人の仕事量を1日最大1800と決めている。