早大に巻き起こる“付属校旋風” 元プロ指導の秘蔵っ子に小宮山監督「早慶戦に期待」
先制打の田村康介、元プロの金森栄治助監督が毎日マンツーマン指導
早大は15日、東京六大学野球秋季リーグの法大2回戦に10-1と大勝し、連勝で今季3つ目の勝ち点を獲得。この時点で明大、慶大と並び同率首位に立った。今季は早大の付属校で、高校受験の超難関校として知られる早大学院出身選手の活躍が目立っている。
6季ぶりの優勝を目指すには、もう1試合も落とせない早大。両チーム無得点の4回に2死満塁の好機を迎えると、小宮山悟監督は早くも7番の梅村大和内野手(3年)に代打を送った。指名されたのは早大学院出身で、この日に入学後初のベンチ入りを果たした田村康介内野手(2年)だった。指揮官は「勝負をかけるかどうか少し逡巡していたところで、金森(栄治助監督)さんが『行こう』と背中を押してくれました。金森さんが毎日マンツーマンで鍛えている選手なので、ひと振りに懸ける価値がありました」と明かす。
右打席に立った田村が、法大先発の左腕・尾崎完太投手が初球に投じた真ん中低めのストレートを振り抜くと、打球はレフト線ギリギリで弾み、値千金の先制2点二塁打となった。
「初めてベンチに入った自分に、まさかこんな大事な場面を託してくれるのかという気持ちでした。金森助監督から『初球から思い切り行け』と言われて、初球に何が来ても絶対強く振ろうと思っていました。(見送れば)ボールだったかもしれませんが、うまく打てて、しかもギリギリでファウルにならなくて、よかったです」と夢見心地に振り返った田村。現役時代にプロで活躍した金森助監督の“秘蔵っ子”。早大はこの一打で勢いに乗り、13安打10得点で大勝を収めた。
基本的にレギュラークラスが入寮を許される「安部寮」には入っていない田村は、前夜に自宅でコミュニケーションアプリを通して初のベンチ入りを知った。「自分が入るなんて信じられませんでしたが、もともと早稲田で野球をやることが夢で早大学院に入ったので、それがかなうことがわかり気合が入りました」と唇をほころばせた。
母校も今夏西東京大会で13年ぶりに準決勝進出
実際のところ、早大学院出身の選手が甲子園出場レベルのライバルと競い合い、リーグ戦で出場機会をつかむのは至難の業だが、昨年の秋から山縣秀内野手(3年)がレギュラーの座を獲得。「2番・二塁」でスタメン出場したこの日も、3点リードの5回に先頭打者で三塁線へ絶妙のバント安打を決め、貴重な追加点につなげた。
また、今月7日の立大1回戦では、1点ビハインドの9回2死二塁の土壇場で、篠原優捕手(4年)が代打で今季初打席に立ち、起死回生の同点二塁打を放って、チームを逆転サヨナラ勝ちへと導いている。
少し過去にさかのぼると、柴田迅投手が2020年までの4年間で32試合2勝2敗、防御率1.46と活躍したことが、早大学院の野球部員に奮起を促した。田村は「柴田さんの時代からつないできて、篠原さん、山縣さんという頼もしい先輩がいるので、自分も背中を押されるというか、縦のつながりで刺激をもらっています」とうなずく。母校の早大学院自体もこの夏、高校野球西東京大会で13年ぶりに準決勝まで進出し、初の甲子園出場に迫った。
早大は最終週の早慶戦に優勝がかかる可能性も出てきた。小宮山監督は田村を「普通なら足がすくむところで、初球から振ってやろうという気持ちで打席に立ち、それを実践できるのはたくましい」と称え、「早慶戦に期待したい」と最終週にもベンチ入りさせる意向を示した。
田村自身「“ぽっと出”の自分ですが、優勝争いに貢献できるチャンスをもぎ取りたい」と応じた。“早大学院旋風”には、まだ続きがあるかもしれない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)