メジャーも注目、“逆輸入”左腕がドラフトへ 防御率0点台…「日本で見ない」独特の軌道
埼玉生まれカナダ育ちの四国IL・徳島のシンクレア・ジョセフ・孝ノ助
四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスに所属するシンクレア・ジョセフ・孝ノ助投手は、193センチの長身から投じる最速151キロのストレートと変化球を武器にNPB入りを目指す。今年5月に米国のメアリー大を卒業して徳島に入団した22歳の“逆輸入”左腕が、母の母国である日本で“最高峰の舞台”を目指し、26日に開催される運命のドラフト会議に臨む。
海外でのプレー経験を強みとしているシンクレアだが、野球選手としての土台は日本で築いた。生まれは母の故郷である埼玉県だが、生後間もなくカナダへ戻った。その後、小学2年時に1年だけ日本で生活。その際に少年軟式野球チーム「吉川ストーム」で野球を始めた。
カナダでもソフトボールに触れる機会はあったというが、「本格的に野球を始めたのは日本なんです。日本の少年野球はしっかりと練習をやるので、(小学3年時に)カナダに戻ってからリトルリーグに入ったんですけど、その時には周りより一歩先に進んでいる感じがしました。日本の少年野球チームで、ちゃんとした投げ方を教えてもらって、その基礎が今も続いているんです」と話す。
大学時代はメジャー球団が視察も…NPBを目指し来日
その後も成長を続け、米国のコチス短大とメアリー大で過ごした4年間では、メジャー4球団のスカウトが視察に訪れた。一時はMLBのドラフト指名に期待を寄せるも、視察の日に限って上手くアピールできなかった。MLB入りの可能性がだんだんと薄れ、ひどく落ち込んだ。
卒業が近付き、野球を続けるか就職か悩んだ。選択が迫る期間は「大人として成長できた時期だったと思います」と振り返る。
「日本語を話せるから通訳の選択肢もあるし、僕はビジネス学部にいたので、教授に『アメリカの企業を紹介してあげる』とも言ってもらえました。でも、野球を諦めきれなかったんです。日本で野球をやってみたいし、NPBに今一番近い球団じゃないかなって知り合いの方が言ってくれたので、徳島に来ました」。新たな地でのチャレンジを決めた。
徳島入団後は11試合(27イニング)に登板し、21奪三振。防御率0.56と安定感も抜群だ。長い腕から放たれるボールは、シュート回転しながら独特の軌道を描く。「自信を持っているのは特殊な変化球で、ツーシームとスライダーは日本ではそんなに見ないと思います」と力を込める。
徳島は2005年の創設以降、延べ19人の投手をNPBに送り込んでいるが、左投手の指名はない。「僕が1人目になれたら」と、生誕の地・日本で大きな夢を抱いている。