貴重な経験と選手との絆 プロ野球球団の通訳に求められる重要な要素とは?
簡単には経験できない職業、通訳に求められる能力、最も重要な要素とは?
北海道日本ハムファイターズで通訳5年目を終えた水原一平氏に、よりよい通訳になるために、自分が欲しい能力は何かと尋ねてみた。すると、返ってきたのは意外な答えだった。
「自分に足りないのは日本語力」
物心がついた6歳から米国に住み、大学卒業後はそのまま日系企業に就職して、3年間を過ごしてきたという。日本での就職経験もなく、日本語に対しての不安を話してくれた。このことについて、水原氏を採用したファイターズ・チーム統轄副本部長の岩本賢一氏に当時のことをうかがった。
「水原にはとてもおだやかな雰囲気があり、自分が完璧でないことを正直に話す謙虚さがありました。しかし、その不足した部分を克服し、通訳という仕事に真剣に挑戦したい気持ちを強く感じました」
水原氏がプロ野球球団で通訳という仕事に就くきっかけとなったのは、北海道日本ハムファイターズが出した通訳の公募だった。
米国でも短期間ではあるが、通訳の仕事をする機会を手に入れ、野球界でのキャリアをスタートさせた。だが米国で通訳を務めるのは、どうしても選手の行方にも左右されてしまう。選手の契約が解除されると、すぐさま無職となってしまう可能性とも隣り合わせだ。けれども、水原氏は当時テキサス・レンジャースでトレーナーを務めていた中垣氏(現サンディエゴ・パドレス)からファイターズが通訳を募集していることを聞き、すぐさま応募することを決断した。