【緊急連載(下)】4年半の思いが詰まった1勝 94連敗の東大が乗り越えた壁
入部後に待ち構える壁も、「お世話になった1人1人を挙げていったら24時間たってしまう」
しかし、無事に入部しても大きな壁が待っている。受験勉強で運動能力が低下していることだ。
法大戦で先発した山本俊が2浪しているように、部員の多くが浪人を経験している。現役合格でも、高3夏の部活引退後から半年間は勉強漬けの日々だ。
浜田監督が「リハビリ期間」と言う1年春は、投手は原則として投球練習を行わず、走り込みに重点を置いて高校時代の体力を取り戻すことから始まる。他大学が2月から合流し、春季キャンプに参加しているのとはあまりに対照的だ。
近年は、そんな野球部を大学側も強力にバックアップし、強化に腐心した。元中日の谷沢健一氏や元巨人の桑田真澄氏など、プロ野球経験のある指導者を特別コーチとして招聘。昨年は150キロを放る最新鋭の打撃マシンを導入し、今年はバッテリー陣が初の沖縄春季キャンプも敢行した。監督、選手に大学側の努力が実り、掴みとった1勝だったのだ。
初勝利を挙げた試合後に、浜田監督はこのようにコメントを残している。
「就任してから苦節2年で、やっと勝つことができた。お世話になった1人1人(の名前)を挙げていったら24時間たってしまう」
その言葉に「東大1勝」にかけてきた多くの苦労が表れているようだった。
24、25日に連敗し、13年ぶりの勝ち点獲得はならなかったが、確かな成長を見せた2015年春。秋には勝ち点獲得から最下位脱出へ。東大の戦いは終わらない。
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count