川崎宗則は“色物”ではない 地区Vのブ軍支えた、目に見えない貢献

プレーオフはロースター入りしなくてもバックアップとして同行へ

 今年の川崎は、傘下3Aバファローで開幕を迎えた後、9月1日のロースター枠拡大に伴う昇格を迎えるまでに4回昇格し、4回降格した。いずれの場合も出場機会はほとんどない。マイナーでの成績は打率2割4分5厘、出塁率3割3分2厘と、取り立てていいというわけではない。それでも内野手に欠員が生まれれば、川崎が昇格する。その理由について、ベンチコーチを務めるディマーロ・ヘール氏はこう言った。

「カワサキほど試合前の準備に余念がない選手はいない。明るさと性格のよさが誰からも愛されているのは間違いないが、それ以上にいつでも試合に出られるように、試合に出た時は最高のパフォーマンスを披露できるように、常に努力を怠らない姿勢が、他の選手の手本になるんだ。軽視されがちだけど、守備力は高いしね。彼がチームにいるといないとでは、雰囲気が少し変わるんだ。押しつけがましくなく、それでいて人を巻き込む不思議な力を持つ男だよ」

 プレーオフに出場できるロースター枠は25人。短期決戦のため、先発投手は5人もいらない一方で、代打や代走が勝利に向けての重要なツールとなり得る。鎖骨を骨折した遊撃トゥロウィツキーがシーズン最終シリーズに戦列復帰したこともあり、川崎がロースター入りする可能性は低そうだが、怪我人が出た時のバックアップとして、チームが勝ち進む限り同行するはずだ。

 ロースターに入っていなくても、その日に先発出場するくらいの熱心さで準備を進める姿と、プレーオフという晴れ舞台で襲いかかる独特の緊張感をほぐしてくれる元気溢れる明るさは、他の誰とも替えがきかない。

 メジャーは結果がすべての世界。試合に出場して、バットで守備で勝利に貢献することが最も重要な仕事だ。試合に出ない限り、日本のファンに選手の価値は伝わりにくいかもしれないが、川崎宗則は、決して“色物”ではなく、チームにポジティブな影響を与え、1人の野球人として尊敬を集める存在になっている。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

佐藤直子 プロフィール

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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