「画面から消える投手」誕生秘話 西武中崎の覚悟「生き残るために…」
“師匠”が期待することは? 「それをやったら本当に面白い投手になる」
ただ、「今はまだそんなにヒットは打たれてないですが、ゆくゆくは絶対に打たれる日もくる」と、本人は決して楽観することはない。また、清川コーチも自らの経験から、「相手は、『打てない』と思うと、セーフティバントや盗塁など足でかき回して、揺さぶりをかけてくる。打者が左なら、三盗もようやられた」と、今後訪れるであろう苦境を予測する。
それでも、「(サイドスローを)やってよかった」と両者とも口を揃えるのは、プロとして最も大事な『振り向いてもらえる個性』を手に入れつつあるから。このチャレンジを本格的に始めてから、師匠は弟子に常に言い続けている。
「どこにもいないピッチャーになれ。子どもたちから『中崎~!』って、サイドスローのモノマネされるようにならんといかんよ」
その実現のために、「コントロールと、あと少しスピードを上げたい」と、本人は自らに課すが、実は、「球速を上げるには、クロスステップが邪魔になるところがある。よっぽど体の力とキレを駆使していかないと、正直難しいところはあります」と、同コーチは指摘する。ただ、「だからこそ、それをやったら本当に面白い投手になる」と、愛弟子の未来像に胸を膨らませる。
手術を許してくれた球団への恩返しのため、苦戦が続くチームのため――。そして、自らのプロ野球界生き残りをかけ、背番号46は新たな一歩を歩み出した。
上岡真里江●文 text by Marie Kamioka