四国IL選抜チームが北米遠征で異例のホームステイ 3日間の経験で得たモノ

最後にホストファミリーにしたためた手紙

「心の本質の部分は変わらない。ある意味『アイランドリーグ魂』みたいなね。アイランドリーグの屋台骨っていうか、背骨っていうか。その部分を北米遠征でも実施したい。それに現地の方々が応えてくれたというのは、非常に大きいですよね」

 いざ、選手たちが各ホストファミリーの元へ散らばって行くまで、不安はなくなることがなかった。逆にホームステイに時間を割いたことで、選手の緊張につながるのではないか。迷惑をかけるのではないか。いままで築き上げてきたものが、逆に壊れてしまうのではないか。そういう心配が常にあった。だが、それも杞憂に終わる。

「まさか、ここまで選手たちが楽しんでくれるというか。異なる環境とか、ホームステイという要素を、恐れることなく楽しんでくれたということ。そしてまた、それを僕らが思っていた以上に楽しんでもらえたこと。ホストファミリーの皆さんにもね。初め不安だったのが、ホントに『ホッとした』を超えて喜びというか。これ、まだもっとつながる先があるんじゃないか?って、希望を抱かせてくれるような感触をいま、肌で感じています」

 大きなトラブルもなく終了した去年の遠征に、最初「やり遂げたぞ!」という思いがあった。だが、時間が経つなかで、やり切れなかったことへの悔しさ、反省がどんどん強くなっていく。やっていた取り組みが外へとまったく伝わっていなかったことは、その後の営業活動のなかで想像以上にスポンサーを取ることができなかったことで確信した。内側ではなく、もっと外側へ広げて行かなくてはいけない。それは初めての海外にとまどい、ホテルでふさぎ込んでしまった福永の姿とオーバーラップする。

「実際に現地で交流させてもらったニューヨーク、ニュージャージーの日本人会のみなさんであったり、カナダの大使館であったり。まず、そういうところから人間の関係を作って、信頼関係に基づいて、彼らにもフィードバックして伝えていく。そういう対外発進ですよね。ただ単にバーッと広げるだけじゃなくて、同時に信頼関係も見つめ直す。人間関係を強化してきた結果だと思う」

 何より選手たちが語ってくれた通り、遠征の緊張や試合前の緊張を、ホームステイは大きく緩和してくれた。9日から始まったキャンナム・リーグ公式戦で、最初の対戦相手であるサセックス・カウンティ・マイナーズ相手に連勝スタートしている。昨年は前半、ペースがつかめないまま連敗が続く悪循環で、なかなか勝ち星を挙げられなかった。今年はリラックスできているという部分だけでも大きく違っている。継続するなかで生まれる信頼感を元に、新たなステップを踏んだ。それはこれまで12年間、四国アイランドリーグplusが継続しながら培ってきたものの、まさに延長線上にある。

 ホームステイ3日目、最後の朝に正田は、ホストファミリー宛に手紙を残そうと考えた。

「感謝の思いを。僕が書いてて、平間が風呂入ってる間に書いてたら、あいつが『手紙っスか』って寄ってきて『うわ! バレた!』」と思って。『オレも書こう……』みたいな。ちっちゃいメモ用紙に書いてましたけど、僕はちゃんとノートに。なんなら、さらのノートに書いて、それごと置いていこうかなと思ったけど『この遠征、まだ使うかな』と思って手紙で……。いや、ホームステイいいですよ。良くないことってあるのかなあ。わかんないけど」

 北米遠征は現在、4戦目を終えている。成績は2勝2敗。これから首位を走る強豪、ニュージャージー・ジャッカルズとの3連戦に臨む。スタンドには応援Tシャツを着て、四国アイランドリーグplus  選抜チームのプレーを見守るホストファミリーたちの姿がある。

【了】

高田博史●文

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