北大医学部の気象予報士…異色の140キロ左腕はなぜ独立リーグに進むのか

「大学院や就職は年を取ってからでもできる」…目標は1年でNPB入り

「両親は背中を押してくれました。NPBを目指さなければ、自分がここにいる意味はない。独立リーグでも23歳は年齢的に真ん中より上。やるからには1年でNPBに行きたい」

 現在も「逆算の思考法」を生かし、「NPBに本指名」という目標から、やるべきことを4つに分け、そこからさらに4つずつ細分化し、ノートに記している。例えば、球速を145キロに伸ばすこと、カウント3-2から使える変化球を増やすこと、様々だ。

 目指しているNPBのドラフト戦線では、同じく国立大の東大・宮台康平投手(4年)が注目を集めている。東大と北大出身選手が同時に指名されれば、大きな話題となるだろう。だが、三木田は冷静に状況をとらえる。

「信濃でプレーされている東大出身の井坂さんも『学歴が注目されない社会がいい』と言っていると聞いたことがあるけど、自分もそう思う。学歴のことを言ってもらえるのはうれしいけど、マウンドに立ったら同じこと。宮台君をはじめ、進学校でもいい選手が出てくる。そういうことに関係なく、1対1で勝負できるから野球はおもしろい」

 2月1日から本格的にチームは始動。脳卒中患者のリハビリに関する卒論提出に続き、2月末には国家資格の作業療法士の資格試験が控える。「また勉強もしなきゃいけない」と苦笑いを浮かべたが、心の真ん中には野球がある。

 約束された未来ではなく、月給10数万円で働く未知の場所。最後にもう一度、なぜ独立リーグを選んだのか、聞いてみた。一点の曇りもない表情で、答えは返ってきた。

「確かに批判的な意見は、すごく多かった。でも、大学院や就職は年を取ってからでもできると思うんです。野球は今一番楽しんでいるし、体がピークの状態でしか挑戦できない。今、できることを100%やってみたいんです」

 北海道大学(当時札幌農学校)初代教頭のクラーク博士は「少年よ、大志を抱け」と言った。三木田が抱いた「NPB入り」という大志は決して、簡単なものではないだろう。それでも、この男なら実現させてしまいそうな気もする。今を100%でやり抜き、目標を一つ一つ叶えてきた。これまでの人生が、そうであったように。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

RECOMMEND