糸井、デスパイネ、山口、岸、黒田…数字で検証、主力退団の穴は埋まるのか
吉川、陽、ゴメス…その他の選手たちの穴は?
その他では、日本ハムのアンソニー・バース、吉川光夫の放出で生まれた投手陣の穴は痛手となりそうだ。両投手は先発、救援で合わせて213.1回を投げている。このイニングを他の投手で埋めることになるが、投手陣の枚数に不安を抱える日本ハムとしては213.1回というのは相当なボリュームだ。メジャー帰りの村田透、新外国人のエドウィン・エスコバーなどを補強したものの、簡単に埋まるものではないだろう。
同じく、日本ハムでは陽岱鋼がFAで退団。主力選手ではあるが、昨季の陽岱鋼は故障もあり働きが限定的で、穴はそこまで大きくはない。昨季のレベルであれば岡大海などの活躍で埋まる可能性はありそうだ。ただ、陽が良いコンディションでフルシーズンを送ったと仮定した働きまでを岡が担えるかというと少し厳しい。基準をそこに置いた場合はマイナスが生じる状況ではある。
最後に阪神のマウロ・ゴメスに触れておきたい。ゴメスは傑出した選手ではなく、リーグ平均レベルの一塁手であった。その退団が大きな穴とはいえない。阪神は新外国人のエリック・キャンベルを獲得したが、キャンベルにこれを埋める働きを求めるのは、そこまで難しいオーダーではないだろう。ただ、阪神は内野の全ポジションでレギュラーが定まっていない。計算できるポジションがなく非常に不安定な状況だ。攻撃で全くパフォーマンスが出せない事態に陥るリスクを軽減するという意味で、ゴメスを残留させてもよかったようにも思える。
以上、主力の退団で生じた穴が、球団にとってどれほどのものになりそうかを概算した。ポジションにおける球団間の力関係は、コンバートの実施や主力のケガなどで変わってくる。ダメージはあくまで昨季の力関係をベースにしたものだが、それでもオリックスや西武などに生じた穴がもたらすダメージは、ペナントレースを戦う上でかなり厳しいものになりそうだ。
※ダメージの計算には、野手では出塁力と長打力、両面での働きを得点換算し平均と比較するwRAA(weighted Runs Above Average) に加え一部走力も評価した。投手では奪三振、与四死球、打たれた打球の種別などから働きを推定するtRA(true Run Average)を用いている。
【了】
DELTA●文 text by DELTA
DELTA プロフィール
DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~5』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(http://1point02.jp/)も運営する。