楽天松井裕らが待つプロの世界へ 大学ジャパンの4番を支える卓越した打撃論

今秋のドラフト候補に挙げられる東北福祉大・楠本泰史【写真:高橋昌江】
今秋のドラフト候補に挙げられる東北福祉大・楠本泰史【写真:高橋昌江】

東北福祉大・楠本の打席は面白い!? 満を持して運命のドラフトへ

 第48回明治神宮野球大会の出場をかけた第9回東北地区大学野球代表決定戦は24日に岩手県・花巻市営球場で行われ、富士大が優勝した。出場4校で争われた今大会。21日の1回戦で優勝の富士大に敗れたのが東北福祉大だった。タイブレーク延長10回の末にサヨナラ負け。侍ジャパン大学代表で4番を打ち、今秋のドラフト候補に挙げられる東北福祉大・楠本泰史の大学野球が終わった試合でもあった。

 打球は、センターを守る楠本の右側を抜けていった。4-4に追いつかれたタイブレークの延長10回、1死満塁。8球もファウルで粘った富士大・佐藤龍世が12球目に捉えた打球だった。三塁走者がサヨナラのホームを踏み、歓喜に沸く富士大。トボトボと整列に向かう東北福祉大。センターの楠本は打球を拾うと、きれいに磨くように両手でボールを包み、球場の最深部から整列に加わった。

「最後はいいチームになったので。結果、負けたんですけど、4年生が出せる力を出して負けた。悔しいですけど、大学4年間で悔いはないかなと思います。後悔はないですね」

 悔いと後悔――。今、この瞬間の敗れた結果には悔しい思いがある。ただ、学生野球やこれまで歩んできた道のりが間違っていたとは思えない、むしろ、よかったと思えるからこそ、「悔しいけど、後悔はない」という言葉が出たのだろう。

 楠本の打席は面白い。今、何を考えて打席に立っているのだろう、とワクワクさせられた。この日の初回、1死一塁で回ってきた打席でおかしな三振をしたが、試合後、楠本はこう振り返った。

「リーグ戦が終わってから、しっくりとこないまま過ごしていた。よし、いけるという感覚ではなかった。でも、そんな言い訳を作っても仕方がない。思い切って、自分のできることをやって、ダメだったら仕方がないくらいの気持ちで臨みました。迷ったんですよ。迷ったらやられました。落ちてくるのかなと思ったら、ヤバイ! 横に行った、と思って、ファウルにしようと思ったら…。ヤベッ!てなりました」

 読みが外れ、スライダーにバットは空を切った。その裏、富士大が1点を先制。東北福祉大は無得点のままイニングは進み、4回の第2打席はセンターフライに倒れた。

 5回を終えて、0-1とリードを許していた東北福祉大。6回、1番・吉田隼が四球で歩き、2番・山本昂征の中前打で無死一、三塁のチャンスを作った。ここで、この日3度目の打席に立った楠本。1ストライクからの2球目。捉えたと思ったはずが、コロコロ、コロコロと進んでいるような、進んでいないような打球になった。

「変化球を引っかけて、空いていた一、二塁間を抜けば、自分の今の状態では一番、ヒットになりやすいと考えました。まっすぐを見送って、変化球を引っかけるつもりだったんですけど、なんで当たらなかったんですかね。バットの先とかじゃない。ちゃんといって、当たらなかった」

 富士大の先発・鈴木翔天が捕球。素直ではない打球を処理し、一塁に送球したが、ベースカバーに二塁手が遅れており、ボールはファウルゾーンに達した。これで三塁走者がホームインし、同点。「まだ、ツイているなと思いました」。その後、5番・寺田和史の犠飛で勝ち越し。腑に落ちない打席ではあったが、逆転に貢献した。

 しかし、富士大も諦めない。8回、4番・三浦智聡がレフトへ同点ソロを叩き込んだ。試合終盤に振り出しに戻された。

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