大阪の野球人にとって「特別な場所」日生球場&藤井寺球場の記憶

元近鉄・村上さん「藤井寺は近鉄が残してほしかった」

 日生、藤井寺のなくなった今、大阪府内にはアマチュア野球の公式戦を行える球場が足りなくなってしまった。

「プロ以上にアマチュアが使っていた2球場だったからね。この2球場以上に使い勝手のいいところはなかったんじゃないかな。球場側も、近鉄よりも優先なんじゃないか、と思うくらいアマチュア野球を大事にしていた。駅からも近いし、プロでは狭かったけど、アマチュアには十二分の広さ。ロッカーなんかも万博や花園なんて草野球場を少し良くしたような設備。新しい球場もいくつかできているけど、もっと作ってほしい。そういう意味では東京の方が、駒沢や八王子、江戸川など郊外へ行けばたくさん球場があるからね。

 やっぱり日生と藤井寺がなくなった時は寂しかったよ。日生は企業のものだからしょうがないけど、藤井寺は近鉄が残してほしかった。プロでなくともアマチュアでずっと使ってほしかった。近鉄で長かったとはいえ、福岡出身の僕でさえそう思うから、大阪の人たちはもっとそう思っているんじゃないですかね」(村上さん)

 プロやノンプロに入って現役を続けられるのはほんの一握り。多くの選手たちは高校、そして長くとも大学で「勝った負けた」の野球とは離れてしまう。だからこそ、自分が現役最後に立ったフィールドは一生、記憶に残る。そこに行けば当時の夢の舞台があり、1つの青春の終わりと、新たな青春の始まりを思い出す。それはその場所が広い、狭い、キレイ、汚いではない。特別な場所、それこそが日生であり藤井寺であった。しかし、その場所を失ってしまった大阪の選手たちも少なくない。

 高校野球100回の記念大会がまもなく始まる。選手たちにとって特別な場所は可能な限り、残してほしい。それこそが言葉だけでない真の「レガシー」ではないだろうか。平成最後の夏がまもなく熱く燃え上がる。

(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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