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全日本軟式野球連盟、新潟県が進める「球数制限」への取り組みを紹介
第2部は全日本軟式野球連盟(全軟連)の宗像豊巳専務理事と、新潟県青少年野球団体協議会の石川智雄副会長によるシンポジウムが行われた。川村卓筑波大学体育化学系准教授がコーディネーターを務めた。
全軟連は今季から学童野球を対象に投球数制限を導入。宗像氏は、マクドナルド杯、中学野球の大会、女子大会で実施した選手の肩ひじの検診結果を報告した。また投球制限を行ったマクドナルド杯では、1試合当たりの投手数や投手1人当たりの投球数に大きな変化があったことを紹介した。
マクドナルド杯では、投球数制限だけでなく一度投手から野手に変わった選手は、もう一度投手になることができないルールを導入したが、これに賛否があったことも紹介した。今後は育成主義と障害予防の両輪によるバランスの良い発展が必要だと締めくくった。
新潟県高野連は今春の県大会から「球数制限」の導入を発表した(最終的には導入見送り)。石川氏はこの決定が県高野連だけの意向ではなく新潟県の青少年野球の総意であったことを紹介。その背景には、新潟県の小、中、高校の野球団体による新潟県青少年野球団体協議会(NYBOC)の存在があった。NYBOCは2009年の新潟スポーツ医学研究会が契機となって発足。野球人口の減少に危機感を持ち、子供を安心して預けられる環境づくりというテーマを団体の垣根を超えて共有してきた。
新潟県の野球少年は「野球手帳」を配布される。この手帳には障害予防などのセルフチェックができるようになっている。この手帳に記入しながら小、中、高校と野球を続けることで自らの成長と、障害の既往歴を自分で確認することができる。
またNIIGATA野球サミットを開催し、新潟県の野球少年の未来について語り合った。石川氏は、スポーツマンシップを前提として、投球制限と指導者養成を行うことによって、子供たちを野球障害から守ることができ、野球人口の減少に歯止めをかけることができると話した。
このイベントには、研究者、野球指導者、医療関係者など約100人が出席した。アメリカと日本の取り組みには、大きな差がある。しかし関係者が垣根を超えて情報共有し、ムーブメントを起こすことで、野球改革が進むと感じられた。
(広尾晃 / Koh Hiroo)