相手が恐れるパ・リーグ“敬遠王”は誰? 過去10年で見る強打者は

「敬遠」を読み解くと、選手とチームの双方に対する理解が深まる?

 2015年の中田も、4月だけで3個の故意四球を記録。この月は打率こそ.254ながら7本塁打、OPS.983と持ち前の長打力を発揮していたが、その一方で4月の大半の試合で中田の後を打つ5番を任されていた、新助っ人のハーミッダが打率.187、1本塁打と絶不調に。その後はハーミッダに代わってこの年打率.326とブレイクを果たした近藤健介外野手が5番に定着したこともあり、中田は5月に1個の敬遠を記録したのみだった。

 2016年に自身2度目の首位打者を獲得した角中も、9月に3つの故意四球を記録。この月は7月と並んで年間最低となる月間打率.280と、決して絶好調ではなかったが、後を打つ4番のデスパイネがこの時期に故障で戦線離脱。この年チーム最多の24本塁打を放った助っ人の不在と、チームの中心打者だった角中への敬遠の増加は無関係ではないだろう。

 2017年の柳田は、7月以降の3カ月だけで合計7個の敬遠を受けている。8月は打率.259、9月は同.269と好調とは言い難かったが、後を打っていた4番の内川が7月に打率.156と絶不調に陥ったうえに故障で戦列を離れ、柳田が4番を任されることに。そして、後を打つ5番のデスパイネは7月に打率.233、8月に.225とやや調子を落としており、デスパイネが月間打率.311と好調だった9月には、当の柳田が14試合に出場しただけで故障離脱。こういった巡り合わせが敬遠の数に影響していると考えると、つくづく興味深いものだ。

 以上のように、敬遠という数字が持つ性質通りに、多くのシーズンでチームを代表する強打者・好打者たちがランキングに名を連ねていた。しかしながら、考察を加えていくと、各選手の打撃力に加えて、さまざまな要因が絡まって敬遠の数が積み重なっていった、という事実も同時に見えてくる。

 申告敬遠の導入により捕手が立ち上がってボールを受ける場面は見られなくなったが、依然として敬遠という作戦は野球の重要な要素の一つであり続けている。敬遠が多い選手がなぜ歩かされているのかを考えてみることは、より深く野球を理解するためのきっかけとなるのではないだろうか。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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