「ここでダメだったら、もうダメ」 復活期す田澤純一が「野球人生を懸ける場所」
週5日を過ごした筑波大学でのトレーニング「自分の野球人生を懸けるつもり」
当初はオフを過ごす横浜から週に1、2回のペースで筑波大学に通い、トレーニングを続けた。自重や軽いウエートで行うトレーニングは想像以上にきつく、簡単そうに見えてできない動きの多さに驚きの連続だった。だが、できなかった動きが少しずつできるようになり、効果を実感できるようになると、今度は自分で「このトレーニングをすれば、あの動きができるようになるのでは」「この動きができないから、あのトレーニングをしよう」と繋がりをイメージできるようになってきた。
「僕はしっかり勉強している学生とは違うので、体に対する理解が深まったというわけではないんです。ただ、この年齢になっても、トレーニングの積み重ねでできる動きが増えている。今までにない感覚を味わうことができたというのが、僕が筑波大学でトレーニングしたいと思う理由です」
過去の良かった時期の動きに戻すのではなく、今の自分ができる動きの引き出しを増やすイメージだという。「過去を求めるのではなく、今ある状態の100%をどうやって出すか。少しでも自分ができる動きを増やして、それがいい投球フォームに繋がればいいと思います」と話す。トレーニングを続ける一方で、投球動作を解析してもらい、「投げる動作に絶対に必要なことを学ばせてもらったり、自分に何が必要なのかアドバイスをいただいたり。体の動きが一方に偏りすぎていないか、左右のバランスを見て、整えていただいています」。明るい表情こそが、4年の積み上げを実感している証拠だろう。
昨シーズンは渡米11年目にして初めてメジャーでの登板がなかった。もう一度、メジャーに上がり、打者と真っ向勝負したい。その思いに駆り立てられ、今年は年明け早々から5週間にわたり月曜から金曜まで週5日を筑波大学で過ごした。そこには静かな決意も潜んでいる。
「自分の野球人生を懸けるつもりでやっています。筑波大学にはいろいろな設備が整っていて、いろいろな考え方をする人たちがサポートしてくれている。ここでやってダメだったら、もうダメ。残りの野球人生、どうあがいても上がらないんじゃないかって、自分の中では思っていて……。ただ、今は『ここができるようになった』『あそこができるようになった』ということを少しでも感じられるので、まだ野球を続けたい、一生懸命にやりたいという活力になっている。もちろんトレーニングはきついですけど、うまくできる動きが増えたり、フォームも良くなっているのを感じられる。自分で自分はまだいけるって信じられているので、楽しいです」
プロジェクトを立ち上げ、サポートを続けてくれる川村准教授、谷川准教授、福田准教授には感謝の気持ちでいっぱいだ。そして、筑波大学との縁を繋ぎ、シーズンを通じてサポートに徹してくれる井脇トレーナーには足を向けて寝られない。「人との出会いや繋がりは本当に大きいと思います」。その他にも周囲で支えてくれる数多くの人々に応えるためにも、今シーズン、2年ぶりのメジャー登板を果たす意気込みだ。
渡米してから12度目の春。アリゾナ州グッドイヤーから田澤純一の挑戦が始まる。