大学野球の学生監督が異国の地で目にした子どもたちの“野球事情” 「多様性が必要」

ドミニカで感じた野球への関わり方の多様性「野球人口が減っていく中で必要なこと」

――ドミニカ共和国には甲子園のような大きな大会はありませんから野球少年の目標はMLBのアカデミーに入ることなんですね?

「そうです。4つ目に訪問したマニー・アクタリーグもMLBとの契約を目指しています。マニー・アクタ氏はナショナルズ、インディアンスで6シーズン監督を務めた有名な指導者です。ここには8歳から14歳の子が通っています。この施設は、サントドミンゴではなくマニーさんの出身地であるサンペドロ・デ・マコリスにありますが、教育内容が素晴らしかったです。マニーさんは、MLBと契約をして大金を手にしたドミニカ共和国出身の選手が、お金の使い方を知らないために騙されて破綻する例をよく目にしてきました。だから野球だけでなく、いろいろなことを学ばないとだめだと考えたのです。

 だからマニーさんの施設には、学校に行っていないと入れません。この施設には政府がグラウンドを提供しています。国も後押ししています。そのグラウンドには教室もあって、英語とプログラミングを教えています。ドミニカ共和国の学校は午前中に終わるなど、教育が不十分なので、学校に行っている子どもでも足りない部分があります。それを補っているんです。子どもたちはグラウンドに来るとゴミを拾います。これには感心しました。ただ、あとでごみを捨てる子どもも見かけました。これはよくわかりません(笑)」

――ドミニカ共和国には、野球について様々な学びの場があるのですね。

「それが素晴らしいと思います。子どもたちは野球といろいろな関わり方ができます。日本でも、本気で甲子園やプロ野球を目指す子どもがいる一方、ただ遊びで野球をやりたい子もいます。そうした子どもの様々なニーズを受け入れることができる場所が必要ではないかと思いました。野球人口が減っていく中で、そうした多様性が必要だと思いました。ドミニカ共和国滞在中に堺ビッグボーイズ中学部の阪長友仁監督にお目にかかりました。セントオリンピコの施設にアテンドしてくださいました。またウインターリーグも一緒に観戦しました。阪長監督は『自分の力で見たいものを見て、知りたいことを知るのが大事。その過程が大切だ』とおっしゃいました。今回のドミニカ共和国訪問を、僕の今後の活動に役立てたいと思います」

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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