もし肘、肩を故障したら? 名医が語る思い切ったノースロー調整が大事な理由
肩、肘の障害を起こすのは球数だけじゃない? 投球フォームにも原因が
プロ野球選手の練習を伝える報道の中で「ノースロー調整」という言葉を耳にすることがあるだろう。これは文字通り、キャッチボールなどでボールを投げずにコンディション調整を行うことで、疲れが溜まった肩や肘を休ませる目的がある。
子どもたちの中にも、肩や肘に疲れを感じる時は軽いキャッチボールで済ませる選手はいるだろう。だが、痛みを感じた時には、思い切ってノースロー調整を行うことも大切だ。
「障害を起こしていれば、完全休養が一番早く治ります。障害がなければ、5、6割の力で軽く投げるのが問題になるわけではない。ピッチャー、キャッチャーの距離で軽く投げるくらいなら、怪我のリスクはないと思います。ただ、障害を起こすのは、球数だけじゃないと思うんですよね」
古島医師は、障害を引き起こす要因として考えられることについて、こう説明する。
「球数はもちろんですけど、球の強度、投球フォームも大事です。例えば、悪いフォームで強く投げれば、より早く壊します。フォームが良くてもたくさん投げれば、それでも壊す可能性はあります。悪いフォームでも軽く投げていれば故障はしない。数、強度、フォームはかなり密接な関係だと思います。そこに、試合や大会という要素が絡むと、疲労度が関係するので、いいフォームでも疲れていると怪我に繋がるんですね」
球数、投げる強度、投球フォーム、そして疲労度の関連性について、日米の先発スケジュールの違い、そして陸上競技を例にとって、説明してくれた。
「日本人投手がMLBに行くと、大体1年目の後半で故障することがありました。日本では中6日で投げていたのに、メジャーでは中4、5日で投げることになる。たった1か月くらいだったら中4日でも怪我をしないかもしれないけど、それが半年続くと最後の方は疲労が取れず、同じ球数を投げても負担がかかってしまうんですね。
例えば、400メートルのインターバル走で10本走ろうという時、最初は400メートルを1分のペースで走れても、10本目に同じ体力で走れるわけじゃない。思いきり走っても、そのペースでは走れなくなる。そういうところで頑張ると怪我をするんですね。肘も一緒です」
肩肘に違和感を感じたら、恐れずにノースロー調整をして疲れを取ること。それが大きな故障を避けるポイントと言えそうだ。