「全国唯一の春の大学野球」 東京六大学が9日間の“真夏の春”を成立させた意義

他の大学野球連盟関係者が視察「一部監督からは『秋へ向けてありがたかった』と…」

 東京六大学野球連盟の内藤雅之事務局長によると、9日間の開催で熱があり、チケット払い戻しで入場を断った観客は3人、熱中症で救急搬送された観客は2人。想定していたよりも少なかったことだけに関していえば「その意味では成功だった」(内藤事務局長)。何より各校がリーグ戦開幕へ向け、不要不急な外出自粛はもちろん、感染対策を徹底したことも大きく、リーグ戦中も選手に大きな怪我、体調不良者は出なかった。

 リーグ戦には社会人野球、ソフトボールのほか、他の大学野球連盟関係者が複数視察したと内藤事務局長は明かす。

「これだけ暑い中で、感染対策もしっかりとした6校の協力を得て、無事に終えたことを心からうれしく思う。今、有観客でやっているのはプロ野球とJリーグと大相撲くらい。それ以外にアマ野球関係ではほとんどない。他の連盟の一部の監督からは『春にリーグ戦をやったのは東京六大学だけなので、秋のリーグ戦を自分たちで開催する上でありがたかった』という言葉を頂いた。我々としても今回、やって良かったと思っている」

 他の25連盟にもたらした希望。3季ぶり史上最多46度目の優勝を飾った法大・青木久典監督は実感を込め、リーグ戦を振り返る。

「今回のリーグ戦には格別な思いがあった。我々だけではできなかった大会。この状況下でも連盟、マスコミ、関係各位の協力、支援を頂き、観客の皆さんも多くの方に見に来ていただいた。そのおかげでできたことだと思う。東京六大学には歴史がある。優勝できたのは本当にありがたいことだし、我々が優勝できたことが各連盟にも一つの希望ではないが、秋につながっていくんじゃないか。そういう意味で大変、重みのある大会だった」

 4年生にとっては学生生活ラストシーズンとなる秋。その多くがこのリーグ戦をもって本格的な競技に終止符を打つ。できない理由ではなく、できる方法を求めて――。東京六大学が真夏の9日間で灯した“春の火”が、まもなく訪れる秋、全国の大学野球に広がることを願う。

(神原英彰 / Hideaki Kanbara)

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