入寮後すぐ休部通告→移籍先も統廃合で消滅…引退決断の34歳野手が挑む最後の大舞台
統合チームへの移籍が可能でも引退決断「移籍して勝負できる自信ない」
だが、今回は日産の時とは立場が違った。入社11年目、チームでは主将を務める。
「今後の身の振り方の話が聞こえてきて、同期でも先に移籍先が決まるメンバーがいたり、焦る気持ちも出てくる。そんな中でも、日産では練習、試合はひとつになっていた。いろいろな話が飛び交うのは仕方ないけれど、ひとつになって頑張ろうと言いました。新人の選手は、当時の僕の立場と同じです。一緒にご飯を食べながら『状況を理解しているか?』と話をしました。『わからないことがあったら聞いてくれよ』と言ったんですけど、何がわからないかが、わかっていなかったかもしれないですね」
吉田も希望をすれば、統合するチームに移籍が可能だった。野球で会社に恩を返したいという気持ちもあった。だが、引退を決めた。
「自分の年齢を考えたら、移籍して勝負できる自信がなかった。怪我も増えてきましたし、知らない土地、新しいメンバーの中で勝負していくことはできないと思いました。これからは、今まで支えてくれた会社の皆さんに、微力ながら仕事でお返しをしていきたいと思い、引退を決断しました」
主将を5年間務めた経験もあり、組織を動かすイメージは持っている。
「声かけひとつで選手の動きが変わる。どうやってチームを引っ張っていくかは、わかっているつもりです。会社の中で、チームワークの重要な一員になれたらと思っています。野球を通じてできた人脈を生かし、周りの方々と仕事を頑張っていきたい。これまで培ったものを生かして、社業を頑張りたいと思っています」
チームの岐路を2度経験。一方で、社員の応援に支えられプレーするという社会人野球の醍醐味も味わった12年間だった。
「本当に本当の最後なんだなと思います。これまでの思いをぶつけたいです」
社会人野球の酸いも甘いも噛み分けた吉田は、最後の大舞台で野球人生の集大成を見せる。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)