「時代に即した多様性を」 ポニー初の女性理事が目指す柔軟な組織のあり方
子どもの成長を考えるポニーだからこそ引き受けた理事就任「社会貢献のつもりで」
多様な意見に耳を傾ける姿勢は、野球に限らず、日本の組織が意識しなければならないことでもあるだろう。これまでは縦の指示系統をはじめ、報告・連絡・相談に代表されるリポートトークが重要視されてきたが、「これからはリポートトークに加えて、調和と共感を得ながら相手を理解しようとするラポートトークもしっかりやって、幅を広げていかないといけないと思います」と小出村さんは言う。
「これからの時代、『うちのチームのルールはこれです。これに合わない人はいりません』では消えてなくなってしまいます。少しルールを変えればより多くの人が興味を持ってチームに入ってくれるなら、ルールを変える柔軟性を持った方がいい。ルールに縛られてしまうと、指導者にもプレッシャーになるだけ。今までの常識に囚われないで、柔軟性を持ちながら、チームがいい方向に進むように対応することが大事だと思います。
これまでは多数決をして少数派は遠慮してください、ということが大半でした。でも、その少数派の意見がすごく貴重なこともある。ただ排除するのではなく、みんなで一度考えてみようと立ち止まれる組織になることは大事だと思います。少数派の意見をきっかけに、大きな発展を遂げられる可能性は十分。SDGsが社会のスタンダードとなるのであれば、少数派の意見にも対応できる多様性が強みになるはずです」
「SDGs」「ダイバーシティ」「インクルージョン」といった言葉が並ぶと堅苦しい印象を受けるかもしれないが、要はいろいろな意見に耳を傾け、自分事として捉えながら柔軟に対応していこう、という話だ。個人レベルでは簡単なことだが、これが大きな組織となった時、足並みを揃えるのは容易ではない。だが、ポニーであれば実現できるという可能性が見えたからこそ、小出村さんは理事就任を引き受けた。ポニー主催のイベントでMCを務めたり、国際会議で通訳を務めたりする中で、大人たちが国境を越え、子どものために何をできるか真剣に考える姿に共感を覚えたという。
「どこでも理事を引き受けたかというと、ちょっと違ったかもしれません。国の宝である子どもの成長を守ろうという理念であったり、今までやってきた活動に賛同したので、それであれば私が提供できる付加価値があるんじゃないかと考えました。私は野球の技術が分かるわけではないので、プロを育てるためだけの組織であれば必要はないと思います。野球を通じた人としての成長に重きを置いているからこそ、私も社会貢献のつもりで加わっています」
就任以来、お母さんたちの声に耳を傾けるため、積極的に球場へ足を運ぶ新理事。「私がいる間には、お母さん方も含めたみんなが参加しながら、子どもの成長を守るプラットフォームを作れたらいいと思っています」と話す笑顔は、大きな野球愛と子どもを思う気持ちで満たされている。
(続く。次回は6月4日掲載予定)
(Full-Count編集部)
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