投球数の「制限」でなく「限度」 ポニーが込める想いと全日本選手権で見えた“効果”
広澤理事長、変化を恐れる指導者も「いつか気付いてくれると思う」
中学1年生以下が参加するポニーブロンコ大会では、投手は変化球を投げることは禁止され、直球の質と制球での勝負が求められる。また、打撃でも低反発バットを導入し、打球が飛びすぎる金属バットの性能に頼らず、バットの芯でボールを捉える原点教育に力を入れている。「投手はしっかり腕を振る、打者はしっかりバットを振る。流行りに惑わされたり小手先に頼ったりせずに、目的意識を持ちながら基礎を大事にするアプローチは、野球に限らず将来活躍するフィールドで役立つと思います」と広澤氏は頷く。
チームスポーツながらも、時としてエースや主砲ら“個”の力に頼りがちになってしまう野球。誰か1人がチームを背負うのではなく、全員がそれぞれに役割を持ち、やり甲斐を感じながら取り組めた時こそ、チームが持つ可能性を最大限に発揮できるのかもしれない。
全日本選手権で見かけたポニーリーグならではの一コマを、広澤理事長は大きな笑みを浮かべながら振り返った。
「キャッチャーがボールを逸らした間に、三塁ランナーが生還して点数が入っちゃったんですよ。監督がベンチから『しっかりー!』と声をかけたら、キャッチャーは『はーい!』って(笑)。僕らの頃は怒られたり殴られたりしたこともありますけど、ポニーでは怒声罵声もルールで禁止してますから。子どもたちが伸び伸び野球をやっていて、すごくいいなと思います。そこがポニーの良さですよね。
まだ変化を恐れたり、変化が間違っていると思ったりする人もいますが、いつか気付いてくれると思います。何十年も監督やコーチをしている方は、急に大きな変化を求められても難しいかもしれない。でも、時代が変わりましたし、世の中の流れが変わっていますから。勝つことだけが全てではない。上手な選手だけが試合に出る環境ではなく、代走でも代打でも守備固めでも、全員が試合に出て楽しめる環境作りを目指していきたいと思います」
野球はチームスポーツ。投球数限度が生まれた背景にある原点に立ち返ると、目指すべき方向性は自ずと見えてくるのかもしれない。
(Full-Count編集部)