田澤純一が語る台湾の厳格なコロナ対策と中断期間で得た手応え「方向は間違いではない」
台湾の最優先事項は新型コロナ対策、五輪出場見送りも「淡々としていた」
感染経路が不明な新型コロナ感染者が増加したため、5月中旬からシーズンは一時中断。この時は野球だけではなく、台湾全土で全ての活動が止まっていました。基本的に外出できない状況だったので、数日間は練習もなし。再開後はチームを10人くらいのグループに分け、ジムやグラウンドで時間が重ならないように練習しました。6月に入ってからはライブBPで打者を相手に投げ、6月中旬からは週に2、3回、紅白戦をしながら調整する日々。シーズン再開の予定が何度か先延ばしになったので、実際に始まった時は「ようやく!」という思いがしました。
それにしても、台湾のコロナ対策は迅速で厳格です。台北ではマスクをしていなければ即罰金。市中感染が認められると、途端に感染状況の警戒レベルが引き上げられ、外出が制限されましたが、誰もが協力的でした。スーパーマーケットやコンビニは営業している一方、飲食店の大半は休業し選択肢は減ったように思います。僕は「Uber Eats」頼みの生活でした。練習で球場へ向かう車中から見た台北の街は、まるで時間が止まっているようでした。今では警戒レベルが下がり、街も動き始めています。
台湾ではコンビニ、飲食店、球場など、あらゆる場所の入口にQRコードが掲出されています。電車やバスにもあります。利用する人はスマホでQRコードを読み込んで、画面に出る送信ボタンを押す。すると、名前や電話番号などの情報が登録され、どこに何時にいたかという記録が残り、感染者と接触した可能性がある場合にはすぐに連絡が届く仕組みです。
誰もがコロナ対策が最優先事項だと考えているので、台湾球界として代表チームを東京五輪へ派遣しないと決定した時も、僕が見る限り周囲の人々は特に落胆することもなく、淡々としていたように思います。五輪終了後にメダリストが始球式に登場することがありましたが、五輪を感じたのはその時くらいでした。