大切なのは本音を「聞き出すこと」 元横浜高監督が反省から得た“信頼される”指導論

定めていた沸点は『怠慢プレー』『ボーンヘッド』『マナー違反』

 1つのきっかけは本でした。「コーチング」を知って、関連する本を読み漁りました。そこから「選手の話を聞けばいいんだ」と思うようになりました。それまでは、選手に対して「こうだぞ」、「いいか、わかった?」というスタンスでしたが、「どう思う?」と聞くようにしました。そうすると、選手は「今まで聞いてほしかったんですけど」とよく話すんです。選手が何に悩んでいるのかを知り、「今まで自分は何をやってきたんだ」と反省しました。

 私も若い時はそうでしたが、多くの指導者は「子どもたちに、なめられたらいけない」という意識が常にあると思います。そのために、強面で「こうだ」と考えを押し付ける指導になってしまいます。ただそれでは、指導者にも知らないこと、わからないことがあるということを認めにくかったり、ミスができなかったりするので苦しいと思います。選手とのコミュニケーションにおいて大切なのは「怖いか、怖くないか」ではありません。

 大切なのはよき理解者になること。選手は、自分を理解してくれる指導者なのか、頭ごなしに怒る指導者なのかを見ていると気付きました。選手の話に耳を傾けるようにしてからは関係性が変わりましたし、指導していて楽しくなりました。

 これは選手から人気を集めようということではありません。選手が何を考えているのか、何を思っているのかを知ることで、的確に指導することができます。

 指導者として大切にしてきた方針の1つにあるのが『沸点を明確にすること』でした。これをやったら叱られるというのを、できるだけ分かりやすく示すことで、不必要な萎縮を防いだり、理不尽な叱り方をしてしまうことを防いだりすることができると思います。

 定めていた沸点は『怠慢プレーをしない』『ボーンヘッドをしない』『マナー違反をしない』の3つです。根底に信頼関係ができると、叱った時にそれまではふてくされていた選手が「すみません」と素直に聞いてくれます。理解、納得した選手は自発的に動きます。そのために、感情や感覚ではなく、分かりやすい言葉で丁寧に伝えることが大切だと思っています。

(First-Pitch編集部)

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