東大野球部前監督が説く「二道流」 中学までは他競技との“兼業”を勧めるワケ

中学生の段階で才能を見極めるのはほとんど不可能

 幼児期、児童期というのは本能的に楽しいことをやって喜んでいるんで、親は身体面のサポートを気にかけて、好きなようにやらせてあげればいいのですが、中学生になると進路を決めなくてはならなくなります。でも成長途上の中学生の段階では勉強もスポーツも、才能があるから上手なのか、それとも単に早熟だからなのかはわからない。

 一般的に才能を見極められるのは、骨が固まり成長が止まる18~20歳といわれます。だから、甲子園のスーパースターがプロ野球ではそんなに活躍できなかったり、勉強でも小学校ではすごくできた子が、中学校では普通になっちゃったなんてことはよくありますよね。逆にごく普通の子が高校で目覚めちゃったなんてこともありますから、才能の見極めというのはすごく難しい。少なくとも中学生の段階で、才能か早熟かを見極めることはほとんど不可能です。

 そこでお勧めしたいのが「二道流」です。スポーツなら集団競技と個人競技の2種類をする。野球とサッカーみたいに集団競技の組み合わせだと、大会が重なった時にどちらに出るかという問題が出てきますが、集団競技と個人競技の組み合わせなら、チームメートに迷惑をかけることは少なくなりますからね。野球を軸にするなら、水泳や陸上などと組み合わせて、中学生くらいまでは2競技やってほしいですね。

 勉強も「二道流」で、1つは学校の勉強。ようするに読み書き、そろばんです。もう1つは教養をつけるということ。自分から進んでできるのは探究活動ですね。例えば料理でもいいし、鉄道写真でもいいし、SNSで「いいね」を貰いたくて一生懸命頑張っちゃうようなものですよ。勉強で「いいね」を貰えるのは、クラスで1人か2人ですけど、探究活動ならみんなが何かで「いいね」が貰えますからね。

 10代というのはアイデンティティを求めている。自分には何が向いているかを探している。だったら実際にいろいろやってみなきゃだめでしょう。スポーツも勉強も「二道流」でやってみて、自分にあったものを見つければいい。そういう環境を整えてあげるのが親や周りにいる大人の役割だと思います。

○プロフィール
 浜田一志(はまだ・かずし)1964年9月11日生まれ、高知県出身。土佐高校で野球部に所属し、東大理科2類に現役合格。野球部に入部し、4年時に主将を務めた。東大工学系大学院を修了後、会社員を経て1994年に文武両道を目指す学習塾Ai西武学院を開業。2013年から2019年まで東大野球部監督を務めた。

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