子どもを伸ばす母親のタイプは? 智弁和歌山・高嶋仁氏が考える“親子の距離感”

少数精鋭の智弁和歌山、選手を見るときは親も見る

「雨が降ったらアンダーシャツの替えを持って行こう。昨日、暑かったから水を多く持って行こう……。それも考えなんですよね。野球に通じるんです。だから、子どもにやらせないといけない。失敗したら、繰り返さないんです。親が大体、手伝ってしまう。忘れ物については、大事なものを忘れていったらいいんですよ。チームで『なんで忘れてんだ』と怒られたら、子どもだって、頭に残っている。次からしないようになる。失敗しないと成長はしないんです。かまったらいけない」

 母親から口うるさく指示されている子は、忘れ物をすると「お母さんが持っていかせなかったから」と言い訳する。少年野球をしている頃から、自分で自分の責任を取ることを植えつけることも重要だという。

 智弁和歌山は少数精鋭。高嶋氏は1学年10人の部員を指導してきた。入部希望する選手は多い中、「私は親がどういう方かも調べますね」と目を向けるのは子どもだけではない。

「(中学の)コーチらに、選手のお母さんのことを聞きます。だいたい男の子はお母さんに似ますからね。ガミガミ言うのではなく、じーっと見守っているお母さんの方が、子どもはのびのびとやっていますね」

 野球の成長と子どもの自立は大きく関係していく。高嶋氏が強いチームを作る上での礎には、選手の心も重要だ。そして、未来を作るのが父親の役目だと語る。

「お父さんは子どもの方からよく相談するでしょうからね。今のことよりも2年、3年、いや5年後くらい先のこと、大学のことなどを考えてあげてほしいです。今はレギュラーをとることも大切だけど、野球が終わって、社会人になった時のことを考えてほしい」

 それが大好きな野球を長く、子どもに続けさせてあげることにつながるかもしれない。同じことを継続的に続けることが一番、野球では難しい。

「その過程において、高校ならば甲子園がある。でも、甲子園が全てではない。目標は甲子園ですけど、目的はそうじゃない。将来、世の中に出てから堂々と生きていける、責任感を持って生きていける、社会に貢献できる人間に育ってほしいです」

 たくさんの教え子を世に送り出してきた名将の言葉には、子どもを導き、引き上げる力が詰まっていた。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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