小学4年生で6年生のレベルに到達させたい 少年野球日本一監督の次なる“野望”
好奇心と競争心を刺激、ゴロを捕る練習で“即席アスレチック”
辻監督はこれまで、小学低学年の野球初心者にも、チームに入ったらすぐに戦術を教え込んできた。3~4年ほどプレーすると、指揮官の考えや意図の大半を理解できるようになるという。そのスタイルは、対象が幼児であっても変わらない。頭を使って常に先を読む「多賀野球」を伝えている。
もちろん、もう1つの指導方針「楽しむこと」は忘れていない。幼児や初心者であっても1日3時間練習するため、練習に飽きない工夫は不可欠だ。グラブでボールをキャッチするメニューでは、辻監督は膝をついて幼児と同じ目線になって「落としたら爆発するからなあ。しっかり捕れよー」とグラブを目がけて下からボールを投げる。捕球に失敗した子どもには、「バーン」と大きなジェスチャーをして笑わせる。
ゴロを捕る練習では、子どもたちの好奇心を刺激する。飽き始めたと感じた辻監督が練習をサポートする保護者に準備をお願いしたのは、2つのベンチ。「ボールを捕ったらベンチの上を歩いたり、飛び越えたり、好きにしていいよ」。“即席アスレチック”で、子どもたちのギアを上げる。
さらに、「ボールをたくさん捕りたい子は、前の子を追い抜いてもいいよ」と伝え、子どもたちの競争心をくすぐる。技術の習得に大切な反復練習は単調になりがちだが、アイデア次第で楽しい練習に変わる。辻監督から休憩を告げられた子どもたちからは「えー、もっとやりたい」と声が上がった。
今の園児たちが小学校中学年になる頃、辻監督はどんなチームを作り上げているのか。54歳になっても衰えない好奇心。子どもたちに負けていない。
(間淳 / Jun Aida)
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